金融機関に係る規制緩和~既出とこれからと~
- 佐藤篤
- 2021年5月25日
- 読了時間: 3分
先日金融庁監督局の方が講師を務められる「地域金融機関の現状と課題」と題された研修をオンライン受講しました。
その中で金融機関の業務範囲等の規制緩和に関する解説がありました。金融機関の規制緩和はビジネス環境全般に大きな影響を与えるため、ここで簡単に項目と概要だけシェアしたいと思います。
1.既に実施されている規制緩和
金融機関が所有する不動産の有効活用
自治体などの公共的な役割を有する主体からの要請に基づき保有不動産の賃貸を行う場合は、その規模などについて柔軟に解釈できるようになった。
銀行本体及び銀行子会社などが行う人材紹介業務
銀行本体及び銀行子会社等において、取引先企業に対する人材紹介業務を行うことが可能となった。
地域商社への銀行の出資について
地域銀行が認可を条件に5%超100%まで地域商社に出資できるようになった。
銀行等による議決権保有制限の見直し
地域活性化事業や事業承継などを行う企業への出資について、銀行等の議決権保有制限(5%ルール)を緩和。
地域銀行の独占禁止法の特例
地域銀行の経営統合については10年間の時限措置として独占禁止法の適用除外を認める特例法を制定。
全く知らなかったのですが、これらは全て施行済みのようです。恐らくいずれも金融機関からの要望に応じたものと思われ、既にあちらこちらで関連した動きが発生しているのでしょう。
2.今後認められる可能性のある関連法改正
法務省での民法担保法制見直し議論に合わせ、新たな選択肢となる担保権(事業成長担保権(仮称))に関する論点整理が令和2年12月25日に公表されています。
現在の担保権対象は土地工場などの有形資産が中心でしたが、ノウハウや顧客基盤等の無形資産も含む事業全体に対する担保権を認めるべきかどうかが議論されています。
ベンチャー企業や担保価値のある不動産を持たない事業者は、融資を受ける際に経営者保証を求められるのが一般的でしたが、事業成長担保権が使えるようになることで、経営者保証に依存しない形での融資が可能となるというメリットがあるようです。
確かに経営者保証なしで融資を受けられるのは借手の事業者サイドだけでなく、借手不足に悩んでいる金融機関にとっても望まれる制度改正でしょう。
一方でいざ担保権が実行されてノウハウや顧客基盤を失った借手企業は実質的に事業継続が困難な状況になってしまいます。
私は法律の素人ですので、そもそも根本的に理解を誤っている可能性がありますが、悪意的に解釈すれば、貸手の金融機関が貸し剥がしのような形で資金を引き上げて担保権を実行し、既存事業を脅かされそうだったライバル会社が、借手が有していたノウハウ等を取得することで、合法的に借手会社が事業継続できない状況に追い込めてしまうような気がしています。
この事業成長担保権はまだ議論の段階で将来的に認められるようになるかどうかはわかりませんが、どのように議論が展開していくのか、今後もフォローしていこうと思っております。
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