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過年度の有報に不正の兆候はあったか?~日糧製パン㈱~

  • 佐藤篤
  • 2023年6月30日
  • 読了時間: 2分

更新日:2023年7月3日

前回のエントリーで、日糧製パン株式会社(以下「日糧製パン社」)で発生した会計不正について触れました。


日糧製パン社によれば、不正は過去2年にわたって行われたとのことです。

そこで、2022年3月期の日糧製パン社の有価証券報告書がどうだったのか、不正の兆候はあったのか、確認してみることにしました。



まずは冒頭のサマリー情報です。

2020年3月期~2022年3月期の当期純利益額はあまり変わりありませんが、営業活動キャッシュ・フローは結構差が出ています。



次にキャッシュ・フロー計算書です。

2022年3月期の棚卸資産の増加が目立ちます。

ただ、この時期は2022年2月に発生したウクライナ侵攻により小麦価格が高騰していたので、棚卸資産残高が大きく増加していても、それ自体はおかしくありません。


一方で仕入債務は減少しています。

ウクライナ侵攻が理由で棚卸資産残高が大きく増加したのであれば、辻褄が合わない気はします。

この点、今回の日糧製パン社の不正は特定部門単独で行われたとのことです。

これが組織的に行われた不正であれば、棚卸資産に併せて仕入債務も調整したはずですので、説明には一定の合理性があるように思われます。



最後に日糧製パン社の過年度の有価証券報告書から、棚卸資産残高と材料費の推移を拾ってみました。

「原材料及び貯蔵品」残高の増加が目立ちます。原材料等回転期間を算定してみましたが、2022年3月期は結構長くなっています。

ただ、上述のようにウクライナ侵攻を理由に説明されたら、これだけを見ている限りでは、納得してしまいそうです。



結論としては、不正の兆候と言えそうなおかしな点は確かに存在しました。

ただ、所詮、不正ありきの「後出しじゃんけん」的視点で眺めた結果でしかありません。

それよりも、自分が当時の日糧製パン社の会計監査人だったとして、この結果をみたらどう対応しただろうか、と考えてしまいます。


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