過去に想定された未来の監査~「企業会計」2024年1月号~
- 佐藤篤
- 2024年1月19日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2024年1月号で石川恵子日本大学教授が、継続監査が現在においても定着していない理由について解説されておりましたので、取り上げたいと思います。
継続監査とは
1999年に米国公認会計士協会とカナダ勅許職業会計士協会は、IT化が進んだ未来の監査は「継続監査」が主流になるとの予想を立てた。
継続監査とは、期中にデータをリアルタイムにモニタリングすることで情報の正確性を保証する手法のことをいう。
しかし、予想から25年程経過した現在でも継続監査は主たる監査手法として定着しておらず、システムから作成された情報を事故的に保証する監査手法が主流となっている。
継続監査が定着していない理由
1.クライアントのシステム要因
2020年の調査結果では、継続監査を実施できているのは、クライアントのシステムがERPの場合であることが明らかになっている。
2.記録・保存に関する要因
紙媒体による記録と保存が想定外に長続きしたこと。現在、押印の廃止に代表されるように紙媒体から電子データへの移行が急速に展開しているが、継続監査が想定している電子データの形式は、PDFのような画像データではなく、CSV形式のような標準化された数値データである。
3.組織風土要因
「人が行えばよいことを、なぜ、情報システムで行う必要があるのか」という考え方が一般的であった。
クライアント側からすれば、効率的かつ効果的な監査の実施のために、情報システムに投資する動機付けは乏しい。
感想
継続監査が実現できれば監査作業工数の平準化が可能となるので、監査する側としては是非とも実現させたい一方、被監査企業側としては、そこに資金を投じるだけのリターンを見込める必要があり、それは即ち監査報酬の減額を意味することになります。
監査する側もそれを嫌って、継続監査を推し進める方向には向かわず、結果として、当面継続監査は定着しないのではないか、と思います。
結局はお金の問題に落ち着く気がします。
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