議決権基準日を見直すという提案(前編)~「会計・監査ジャーナル」2024年11月号~
- 佐藤篤
- 2024年11月5日
- 読了時間: 2分
更新日:2024年12月9日
「会計・監査ジャーナル」2024年11月号に掲載されていた「株主総会基準日は有報の後にー株式市場の健全性向上にー(前編)」(三井千絵)を読んでみました。
私には斬新な提案に感じられ、面白く拝読しました。
以下、メモ書きの一部です。
金融庁は春に岸田首相が海外投資家団体に対して行った約束「有報の株主総会前開示」に向けて模索し続けているようである。
一方でサステナビリティ開示基準を有報へ適用する議論において、有報の提出期限を決算日から4ヶ月と延長する案も出ている。
2024年3月決算期の上場企業のうち、有報の株主総会前開示を予定した企業は41社。そのうち半分以上は直前、株主総会から3日前以降に開示しているので、そうするメリットが分かりづらい。
有報で開示される情報を議決権行使に生かすためには、株主総会の3週間以上前に開示することが必要となるが、現状の株主総会日程を前提とするとそれは、決算日後2ヶ月程度で有報を作成することになる。それが実務上困難であるならば、株主総会を4ヶ月後位に後ろ倒しすることを考えるべき。
そもそも期末から3ヶ月以内に株主総会を開催する日本の慣行は他国と異なっている。欧米では株主総会は期末から4ヶ月から5ヶ月後というところが多い。
現在の日本では、ほとんどの企業が決算日と議決権基準日、そして配当基準日を同じ日にしている。
2020年にPwCがまとめた資料によると議決権基準日は米国で10日前から最長で2ヶ月前、英国やフランスでは2日前、ドイツは6日から21日前となっているそうである。
多くの国では、まず監査済みの決算報告書を含む法定開示が発表され、その後に株主総会基準日が設定されている。
日本における議論でも、株主総会を有報開示の後に開催すべきというより、有報開示の後に議決権基準日を持っていくべき(つまり株主総会はさらに後で良い)である。
感想
海外におけるスケジュール(法定開示→議決権基準日→株主総会開催)については、日本の実務に慣れていると違和感を覚えますが、確かに投資家フレンドリーだなと思いました。
投資家フレンドリーということは、利害の対立する経営者にとってはアンフレンドリーということを意味することになります。有報のような詳細情報を開示した後に株主総会に挑むというのは嫌だろうなと想像します。
そういう意味では、株主総会前の有報開示は経済界の反対が強いでしょうし、仮に実現できたとしても、今度は有報記載内容の簡素化を要求してくるだろうと睨んで(?)います。
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