蛸配当と会計監査人の見落とし
- 佐藤篤
- 2023年6月6日
- 読了時間: 2分
ニデック株式会社(以下「ニデック社」)が蛸配当をしたというニュースが流れてきました。
まさかと思ったのですが、ニデック社から正式にリリースされており(リンク)、どうやら事実のようです。
どの程度分配可能額を超過したのか、当該リリースには具体的な数値が示されていないため、ニデック社の決算書から推察してみました。
分配可能額(2022年3月期の単体決算書より。単位百万円)
その他資本剰余金58,023+繰越利益剰余金130,961ー自己株式123,370=65,614
2023年3月期中の分配額(2023年3月期決算短信より。単位百万円)
配当額合計40,426+自己株式取得額53,578=94,004
以上から、あくまで概算値ですが、28,390百万円分配可能額を超過してしまったようです。
ところで、ニデック社からのリリースには以下のような記載があります。
当社の会計監査人であるPwC京都監査法人も分配可能額の超過を、見落としにより、指摘できていなかったことが判明しました。
ここまで書かれるのも珍しいな、と一会計士として苦笑しながら読んだのですが、会計監査人であるPwC京都監査法人が見落としを認めたということのようです(リンク)。
一般的には、年度末の監査において、配当予定額と自己株式取得枠が分配可能額を超過していないかのチェック作業を実施します。
一方で中間配当やその後の自己株式取得額が分配可能額内に収まっているかについては、特に被監査会社の管理体制がしっかりしている場合、監査人も見落としてしまう可能性はあると思います。
PwC京都監査法人も恐らくそのパターンだったのではないかと推察します。
とは言え、今回の事例はニデック社の内部統制上の不備になる訳ですが、この点、会社側と会計監査人側がどう対応するのか気になります。
何となく予想はついていますが。
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