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自社株買いと株主資本コスト、運転資本管理から見えるもの~「企業会計」2023年6月号~

  • 佐藤篤
  • 2023年6月23日
  • 読了時間: 2分

「企業会計」2023年6月号から、2つのコラムを取り上げます。


1.OUTSIDE「PBR向上に近道なし」(前田昌孝)

内容としては、PBR1倍割れを改善するための手段として、安易な自社株買いはやめておいた方が良い、ということなのですが、その論拠の一つとして、株主資本コストの上昇を招くことが挙げられていました。


その部分の記載を引用します。

  • 自社株買いをすれば、貸借対照表の右側で負債の部のウェイトが高まるため、株価の振れ幅が大きくなり、株主資本コストが上昇するのだ。

  • 株価の振れ幅が大きくなれば、ペータ値は高まり、株主資本コストは高まる。


今まで私は、負債の方が株主資本より資本コストが低いのだから、自己資本比率を財務健全性が大きく損なわれない程度まで低くすれば、WACCを低くできるものと思っていました。

が、そんな単純な話ではないようです。

勉強になりました。



2.会計指標「”資金繰り”から考える経営」(平井裕久)

こちらは運転資本管理についての研究結果の紹介です。


CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)

  • 売上債権回転期間に棚卸資産回転期間を加え、仕入債務回転期間を差し引いて求められる。短いほど資金繰りが楽であることを示す。

CCCによる経営分析

  • CCCと収益性の相関関係についてはいくつかの研究において統計的有意性が確認されているが、その因果関係の解明は十分にされているとは言えない。

  • CCC改善を具体的な経営目標に掲げて、短期的にフリー・キャッシュ・フローの水準を大幅に積み増すことにより、結果的に企業価値向上につながるケースが示されている。

  • 現段階では、創業期や衰退期にCCCを短くするよりも、成長期や成熟期にCCCを短くする方が、その経済的効果は大きくなることが明らかになっている。

運転資本管理と不正会計の関係

  • 運転資本の変動が増益を達成するために利用されているという証拠が示されている。

  • 企業の運転資本活用の効率性を示す指標を用いて、不正会計を行う3年前から当該指標の値が統計的に優位に大きくなっていることが確認されている。


CCC、売上債権回転期間、棚卸資産回転期間の著しい悪化は不正会計の可能性を示唆します。売上債権と棚卸資産を操作するのが不正会計の王道であることは今も昔も変わりません。


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