自社株取得に新たな制限を課すべきか
- 佐藤篤
- 2021年12月31日
- 読了時間: 2分
先日の国会で、岸田首相が自社株取得に係るガイドラインの検討について言及されました。
ブルームバーグの記事(リンク)によりますと、企業がキャッシュを設備投資や従業員の給与アップに使わないことが問題との趣旨のようです。
これはこれで気持ちとしては理解できます。
ただ、個人的には現状の制限で十分ではないかと考えています。
会社法による自社株取得制限
そもそも日本では、自社株取得は会社法第461条で分配可能額まで制限されています。
そのことは弊ブログの以下の記事で触れました。
債務超過になるまで自社株取得できる国も世界にはあるようですが、日本では不可能です。
借入して自社株取得することは問題なのか
また同じブルームバーグの記事では、利益が財源なら問題ないが、借入してまで自社株取得するのが問題とされています。
この点も、上述の通り分配可能額までの取得制限がかけられていますので、現状でも原資は剰余金なのです。
ただ、企業は稼得した利益をそのままキャッシュとして保有している訳ではなく、売掛金や棚卸資産をファイナンスしたり、固定資産や有価証券、貸付金として運用したりしているため、自社株取得に必要な資金を借入しているに過ぎません。
これは配当の場合も変わりはなく、配当金支払のために借入する企業は決して少なくありません。
借入しての自社株取得を制限するならば借入しての配当も制限され、結果として企業は多額のキャッシュを保有しなければならなくなり、設備投資や従業員の給与アップは寧ろ滞ることになりかねない気がします。
さらに付け加えますと、低利で借入できる企業の場合、借入して自社株取得することで資本コストを下げることができます。
そのことは弊ブログの以下の記事で触れました。
資本コストの低下は当該企業のハードルレートを下げることに直結しますので、新たな投資を促す効果が見込めます。
そういった視点からも、借入しての自社株取得を制限するのはいかがなものか、と感じます。
まとめ
岸田首相も画一的な規制には慎重であるべきとのお考えのようですので、会社法を改正して自社株取得制限を厳しくする可能性は低そうです。
ただ、何らかのガイドラインがリリースされる可能性はありますので、注視しておく必要はありそうです。
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