自己株式の無償取得の会計処理
- 佐藤篤
- 2022年5月24日
- 読了時間: 2分
佐藤食品工業株式会社(以下「佐藤食工社」)が2022年5月20日に「主要株主からの自己株式の取得に関するお知らせ」というリリース(以下「当該リリース」)を出しておりました。
佐藤食工社の創業者が逝去されたことに伴い、保有されていた約200万株を佐藤食工社が無償で取得するという内容です。
佐藤食工社の発行済株式総数は約900万株、既に保有している自己株式数は約300万株なので、発行済株式総数(自己株式除く)に対する割合は32.74%に及びます。
この無償取得の規模感もさることながら、遺言の効力が逝去日である2022年3月21日に生じてしまう為、2022年5月13日に公表した2022年3月期の決算短信の数値にも影響してしまうようです。
詳しくは当該リリースをご参照ください(リンク)。
ところでこの自己株式の無償取得、会計的にはどう処理するのでしょうか。
これは企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(以下「自己株適用指針」)第14項に明記されています。
以下引用します。
自己株式を無償で取得した場合、自己株式の数のみの増加として処理する。
通常、資産性があるものを無償で譲り受けた場合は時価で受贈益を計上するのが一般的です。
しかし自己株式については、無償で取得しても取得した会社にとって資産が増加せず、贈与した株主が有していた持分が他の株主に移転するのみ、すなわち株主間の富の移転が生じているのみと考えられ、それが係る会計処理をする論拠です(自己株適用指針第42項)。
この点、当該リリースを見ると、2022年3月期の決算短信への影響は一株当たり情報や配当金総額、配当性向、株式数(期末、期中平均)といった数値に留まっており、貸借対照表や株主資本等変動計算書の数値に影響する旨の記載がないことがわかります。
自己株式の無償取得はめったに発生する取引ではなく、会計処理を覚えておく必要性は低いですが、自己株適用指針に明記されているということ位は覚えておきたいものです。
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