社外役員としての有事への備え~「会計・監査ジャーナル」2024年6月号~
- 佐藤篤
- 2024年5月31日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2024年6月号の特集は「有事における社外役員の対応〜最近の事例を踏まえて〜」でした。
TOB、不祥事・会計不正等の有事の際に、専門家である公認会計士や弁護士は社外役員としてどう行動すべきかをテーマとした対談記事です。
その中で、参加者の一人である弁護士の山口利昭先生のお話が、法的な観点から気を付けるべき点をわかりやすく説明されていましたので、当該部分のメモ書きを記しておきたいと思います。
TOBの際の留意点
TOB価格を巡って争いになり、裁判の決定が出ているケースがある。
有事になれば、善管注意義務を尽くしたかどうかが世間の関心の的になる。
買収を受ける側については、2019年に経済産業省が公表した「公正なM&Aのあり方に関する指針」が事実上は裁判の規範になっている。
公認会計士の社外役員は、株価算定や統合の比率等、中立公正に物事を判定することが役割だと誤解していることが多いが、特別委員会の委員である場合、少数株主の利益のために会社と交渉しなければならず、それを怠ると、善管注意義務違反となる点に注意。
特別委員会の委員の場合、裁判のターゲットになるリスクは高いと言わざるを得ない。最近は株式売買価格決定の申立ての裁判が多く、そこでもし対象会社側にとって非常に安い値段で統合等がなされた場合、対象会社の特別委員は重い責任を問われる可能性がある。
もし社外役員がリーガルリスクに巻き込まれた場合、会社の費用で、社外役員を法的に守るアドバイザーをつけることができる。
不正や不祥事の発生時
基本的には、「知らなかった」のであれば、善管注意義務違反として法的責任を問われる可能性は低くなる。
一方で、内部統制の構築を怠っていた場合は「知らなかった」では通らず、善管注意義務違反となることもある。
社外役員はどのような情報でもできるだけ収集したいが、収集すればするほど「知らなかった」と言えなくなってしまうという利益相反を抱えることになる。
2021年に発生した三菱電機の品質不正問題では、ガバナンスレビュー委員会は監査委員会の社外役員に責任を認めた。 その理由は、2016年の神戸製鋼所の品質偽装事件以降、世間で品質問題が騒がれているのに、同じことがないか議論すべきだったということ。さらに、 同じグループで最初の品質不正事案が発覚した時、自社にもないか、特別点検をする等、情報収集に熱心でなかったということは、法的責任までは認められなくても一定の経営責任はあると判断された。
取締役会に全会一致原則というものがある中で、自分1人が反対意見になった場合の対応方法
議事録に詳細な意見書を添付し、反対したという事実と理由を形に残すようにする。
感想
知り合いの会計士でも上記のような不祥事に巻き込まれた人がいて、改めて社外役員はリスクが高いなあ、と思っていたところでした。
特に、会社の中身を知れば知るほど、善管注意義務違反のリスクが高くなってしまうのは辛いところです。
法的アドバイザーを付けるのは必須だと感じます。
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