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監査品質の定量化問題~「会計・監査ジャーナル」2024年1月号~

  • 佐藤篤
  • 2024年1月23日
  • 読了時間: 3分

「会計・監査ジャーナル」2024年1月号の特集「監査品質の定量的分析:研究者は何をどのように明らかにしてきたか」(前編)を読みました。

全体を通して勉強になる内容でしたが、1エントリー1,000字程度を目途としている弊ブログではとてもまとめきることが出来ないので、今回は個人的に特に面白かった部分のメモ書きをシェアすることにしました。

 

  • 会計における実証研究は、理論的な考察をもとに、会計現象を取り巻く要因の関係に関する期待(仮説)を構築し、実在するデータによってその仮説の適否を検証するものである。

  • 監査品質はそもそも概念であるため、定量的分析のためには、代理変数の利用が余儀なくされる。この代理変数の利用が厄介であり、通常、唯一無二の候補はなく、一長一短の指標の中から、分析目的に照らして最適なものが選択される。そのため定量化の妥当性が分析結果の信頼性を左右することになる。

具体的な変数の代表

1.修正再表示(公表済み財務諸表(の一部)を修正して再公表すること)

当然、監査品質との関連性は高く、精度についても企業の開示状況から明瞭に定義できるので高いと考えられる。

一方で、監査品質を識別できるレベルは「良・悪」という2つになってしまう。修正再表示があった監査品質は低く、それ以外の監査品質は全て高いと理解することは、監査品質を程度の問題として議論する可能性を閉ざしてしまうという問題がある。

2.裁量的な会計利益調整

会計基準で認められている裁量の範囲内で行われる利益調整の程度によって定量化される。

会計基準の範囲内で行われる利益調整に、監査人がどれほど介入すべきである(あるいはできる)のかは議論の余地があるため、監査品質との関連度合いは低い。また、精度も低い。

一方でこの変数の最大のメリットは、監査品質を連続的な程度によって定量化できることである。


  • 上記のように、アウトプットに基づく監査品質変数は、それぞれ長短があるため、近年では、測定上の制約がない限り、2つ以上の指標を用いて分析するのが一般的となっている。

  • アメリカ企業を対象に、学術研究で用いられている多様な監査品質変数と、監査に関する専門家(PCAOBと監査事務所の内部検証)による監査品質評価結果との関係を分析した結果、専門家による2つの評価の両方と関係性が強かった変数は、「修正再表示」と「赤字の回避」の2つであった。

 

感想

裁量的な会計利益調整の代表は製造業における製品の過剰生産ですが、明らかに過剰にみえても、製品在庫が実在し、且つそれなりに合理的と感じられる説明をされてしまうと、監査人サイドとしては、如何ともし難いというのが正直なところです。

もちろん、売り切れなければ、将来的には評価損という形で損失が実現してしまう訳ですが。

また、「赤字の回避」については、クライアントから暗に相談を受けた経験のある会計士も少なくないと思います。

そういう意味では、違和感のない分析結果だと思いました。

 

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