監査の未来と中小監査事務所基盤強化~「会計・監査ジャーナル」2022年6月号~
- 佐藤篤
- 2022年5月31日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2022年6月号に「JICPAオンラインカンファレンス2022開催レポート」が掲載されておりました。
このレポート記事は【JICPAオンラインカンファレンス2022】で行われた講演内容や各セッションの概要で構成されています。その中の「監査の未来」と「中小監査事務所基盤強化と資本市場における活用」の2セッションの概要を読んでみました。
「監査の未来」
記事の内容
監査において主査及び補助者が行う業務をそれぞれ10項目に分類し、どの業務がAIによる代替可能性が高いのか、また、監査法人で各業務を人事評価上どの程度重要視しているかを推定した。
主査の業務は、AIへの代替可能性が低いとされる非定型的な業務が人事評価上重要と認識されている傾向がある。
AIが業務を一部代替することでどの程度の報酬が削減されるのかという生産性の向上額を推定した結果、補助者の業務は10年後に48.4%、30年後に58.0%の生産性向上の可能性があると評価されたことが示された。
感想
証憑突合等の、AIによる代替可能性が高そうな監査業務は、データ形式の統一化や被監査会社のシステム上での監査用アプリケーションの利用を許容してもらう等、企業側の協力が欠かせないと考えられます。
そういった意味では補助者業務における生産性の向上により報酬削減が期待できるという結果は、企業側に監査業務のAI化に協力させるインセンティブになるかも知れません。
「中小監査事務所基盤強化と資本市場における活用」
記事の内容
近年、上場会社の監査を担う中小監査事務所が増加し、企業や投資家の間では中小監査事務所は資本市場を支える上で不可欠な存在であるという認識が広がっている。2021年から、このような状況を踏まえ、中小監査事務所の基盤強化に係る法改正などの検討が進められてきた。
今回の公認会計士法の改正で、上場会社の監査を行う監査事務所に対して法律に基づく登録を義務付けることになった。
実際の中小監査事務所の立場としては一連の制度改正には戸惑いがありつつ、一方でJICPAによる人材採用への支援に強く期待している。
人材育成やデジタル化は、中小監査事務所独自で取り込むことが難しいと考えられる領域でありJICPAからの充実した支援が期待される。デジタル化に関しては、監査調書電子化に係る共通のプラットフォームの作成等が進められている。
感想
このセッション、参加者は大学教授の方、金融庁の方、中小監査事務所代表者の方で行われたようです。
実際のセッションの内容を聞いた訳ではないので確定的な事は言えないのですが、このレポートを読んだ印象では、金融庁の方は監査品質向上のために今回の法改正は必要という立場、大学教授の方は規制自体結構だが、効果の検証が必要という立場のようです。
そして中小監査事務所代表者の方は今回の法改正への戸惑いを率直に表明されておられました。
予定調和的な内容に終始するセッションが多い中、お三方それぞれの主張が比較的明確に現れているのが面白いと感じました。
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