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満期保有目的債券の減損~シリコンバレー銀行の破綻に関係して~

  • 佐藤篤
  • 2023年3月14日
  • 読了時間: 2分

シリコンバレー銀行の破綻で先週末から騒がしいですが、ネットで拾った情報を集約すると、起きていることは以下のようなことのようです


  1. シリコンバレー銀行の顧客(主にベンチャー企業)による預金の引き出し

  2. 一種の取り付け騒ぎになり、キャッシュが枯渇

  3. キャッシュを創出するために多額の含み損のある満期保有目的債券を売却

  4. その結果、自己資本が枯渇

  5. 増資で乗り切ろうとするも上手く行かず破綻処理へ


含み損のある満期保有目的債券を売却するというのはよっぽどの事態ですし、しかも自己資本が枯渇するレベルの損失が発生するというのは尋常ではありません。

そこで、実際に数値を確認してみました。


2022/12/31時点の SVB Financial Group のアニュアル・レポート(10-K)をみますと、

  • HTM securities(満期保有目的債券)の Unrealized losses が 15.160百万ドル

  • Shareholder’s equity が 16,004百万ドル

となっており、相当マズイ状況だったのは間違いなさそうです。


ところで、ここでふと思ったのは、「満期保有目的債券て減損しなくていいのだっけ?」ということでした。

有価証券の減損と言えば株式のことで、基本的に発行体の信用リスクが低い満期保有目的債券の減損なんて、これまであまり気にかけることがありませんでした。


この点、日本基準では、以下のように規定されています。

満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち、時価を把握することが極めて困難と認められる金融商品以外のものについて時価が著しく下落した時は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」20項)。


という訳で、満期保有目的債券も減損が必要です。


債券の発行体の信用リスクに変化がなくても、これだけ急激に金利上昇すれば、含み損が膨らむのも当然です。

日本でも外債を満期保有目的債券に区分している金融機関がそれなりにあるのでは、と想像します。


ただ今回のシリコンバレー銀行の破綻に伴い、債券金利が大きく低下し、各金融機関の保有する債券の含み損も大分減少したはずで、他国とは言え、同業の破綻により一息つけたというのも、何だか皮肉なものだと思わされる事案でした。

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