海外子会社の企業風土・組織文化と不正防止管理~「会計・監査ジャーナル」2024年12月号~
- 佐藤篤
- 2024年12月13日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2024年12月号の連載「公認不正検査士の不正調査手法」は「ESG時代の海外子会社不正防止管理体制‐第1回‐企業風土・組織文化」(吉田武史)でした。
近時は海外子会社に起因した不祥事が散見される上、知人がマネジメントの立場で海外赴任していることもあって、興味深く拝読しました。
海外子会社の企業風土・組織文化における課題
買収したばかりの会社であり、創業者が、現地子会社代表者としてそのまま留任しているため、組織文化としても創業者のカラーが強い。
現地子会社従業員における、遅刻、無断欠勤などが常態化している。現地採用の現地管理職に話しても、あまり気にする様子もない。
現地子会社において、現地採用職員が、日本より派遣されている管理職に対する警戒心が強く、コミュニケーションの十分性に不安がある。
現地従業員からの情報収集のルートは、現地従業員間のレポートラインに限定されており、的確な情報の把握があるか不透明である。
企業風土・組織文化における課題の解決策
(以下は、各項目について特徴的な記載内容のみピックアップしている)
企業理念・社訓・行動規範の浸透
一案として、現地経営陣および従業員が、企業理念等について、自然体で受け入れることができる機会を創出する上では、「ボードゲーム」を利用して、楽しみながら伝えるといった、ハードルが低く、万国共通に楽しめる要素を盛り込んだ取組を積極的に活用することも考えられる。
「風通しの良い職場環境」の形成
特に日本人管理職員と現地従業員間において、信頼関係、コミュニケーションの活発性、情報の透明性を形成するための取り組みが求められる。
内部通報制度
特に海外子会社における不正対応の上では、海外子会社ごとに設けられている内部通報窓口のほか、現地経営陣の不正の懸念について親会社へ通報可能な「グローバル内部通報窓口」の設置が有効である。
社内リニエンシー
「違反事実を申告した者については、懲戒処分の対象としない」とする社内リニエンシーの採用も検討に値する。制度化が困難でも、件外調査時におけるアナウンスでの言及など、事実上の運用としても活用し得る。
なお制度化にあたっては、企業は、首謀者等からの自主申告に対しては懲戒処分の対象とすることができる余地を残しておくことが通常である。
貢献への人事評価又は不正行為者への処分
社内処分は厳格に運用されるだけではなく、その結果が処分対象者の権利に配慮しつつ適正に社内で情報共有されることも重要である。
参考資料
こういった課題に対する解決策について。経済産業省が2019年に策定した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」が参考になる。
感想
海外子会社の不祥事では、現地従業員によるものだけではなく、日本人経営者・従業員によるものも多く存在します。本社の目が届きにくく、牽制が効きにくいため、悪い意味でノビノビしてしまうのは理解しやすいところです。
そういった意味では、グローバル内部通報窓口の整備はマストな気がします。
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