気候変動関連開示とその保証に係る方向性~会計監査ジャーナル2022年7月号~
- 佐藤篤
- 2022年7月5日
- 読了時間: 2分
「会計監査ジャーナル」2022年7月号の特集記事『JICPAオンラインセミナーダイジェスト3月30日開催「気候変動情報の信頼性確保~公認会計士への期待」報告』を読んでいたのですが、今後の気候変動関連開示とその保証に係る方向性が見えてくる内容でした。
以下、当該記事のメモの一部です。
IFRS財団では、開示情報に対する保証可能性をどのように担保するかといった視点を重視し、基準開発を進めている。
サステナビリティ報告の制度化に関して、EUでは法定監査人等による保証の要請、米国では温室効果ガス情報について独立した第三者によるアテステーションを要請する方向で規制案が提案されている。
責任投資原則とCarbonTrackerというシンクタンクから共同調査の結果が示された(以下「PRIレポート」)。温室効果ガス排出量の多い上場企業の年次報告書を対象にした調査の結果、財務報告における気候変動リスクの明らかな欠如として、6つの問題点が提起された。
気候変動関連の重要事項を財務諸表に反映している実務は少ない。
財務諸表の中で、気候関連の仮定・見積もりが明確になっている例は少ない。
ほとんどの企業は、報告において一貫したストーリーを伝達していない。
監査人が重要な気候関連財務リスクや気候関連戦略による影響を考慮している実務は少ない(KAM、CAMにおいて、気候リスクに言及した事例は20%)。
その他の記載内容と財務情報との間に明らかな不整合がある場合でも、監査報告書での言及は少ない(59%の報告で重要な不整合があるが、監査報告書での言及がなかった)。
企業はパリ合意と整合した仮定・見積もりを用いているように見えない。
PRIレポートが出された直後に国際会計士連盟(IFAC)から、職業会計士は2021年度決算に関する報告及び監査において気候リスクをしっかりと考慮しなければいけないという内容のメッセージが発出された。こういったメッセージが出ることは異例。
感想
PRIレポートの示した、開示する企業側と監査する監査人側両方に関連する内容を含んだ6つの問題点は、気候変動開示及びそれに対する保証実務の今後の方向性と捉えていいように思われます。特にIFACがこの指摘を受けて直ちに反応したという事実はそのことを裏付けているように感じます。
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