業績予想についての質問回答結果~「企業会計」2022年11月号~
- 佐藤篤
- 2023年1月17日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2022年11月号の一記事「不確実性下における業績予想の質問票調査の結果と分析」(浅野敬志、青木章通、妹尾剛好)を読んでみましたので、メモ書きの一部をシェアしたいと思います。
分析対象
最終回答企業209社のうち、業績予想を作成している企業206社と作成の有無は未回答だが、その後の質問は回答している企業1社の合計207社。
全体サンプルを対象とした分析結果に加えて、日本基準採用企業とIFRS採用企業を対象とした分析結果も提示する。
業績予想を開示する目的
多かった主な回答
高い透明性や正確な報告に対する評判の向上
企業の先行きに対する予測可能性の向上
強制的財務報告に含まれない重要情報の提供
情報リスクの低減
業績予想の前提としての複数シナリオの有無
レンジ予想を開示する企業の多くは、レンジ予想とともに、その前提も開示している。
ポイント予想を開示する企業の中にも、予想の前提としての複数シナリオを開示する企業が存在する(例として㈱共立メンテナンスの事例が紹介されている)。
207社中129社(62.3%)が業績予想の前提として明示的または暗黙的に複数のシナリオを持っていると回答。
日本基準採用企業は全体サンプルの結果と似ている一方、IFRS採用企業については、「明示的に複数のシナリオを持っている」割合が日本基準採用企業の割合よりも10%以上高い。
業績予想の前提としての複数シナリオの数
相対的に多いのは、
楽観・中立・悲観の三つである企業は129社のうち52社(40.3%)
悲観と中立の二つである企業が46社(35.7%)
シナリオは保守的な傾向があると言える。
業績予想を開示する際の考え方
206社中125社(60.7%)が「保守的または楽観的な内容にしない方が良い」と回答。
79社(38.3%)が「保守的な予想が良い」と回答。
IFRS採用企業による「保守的または楽観的な内容にしない方が良い」との回答率は、日本基準採用企業よりも13.5%高い。
レンジ予想に対する認識
日本企業がレンジ予想を開示したがらない理由
204社中105社(51.5%)が「ポイント予想に対する投資家のニーズが強く、レンジ予想は利用しにくい」と回答。
42社20.6%が「同業他社がポイント予想を開示するため、レンジ予想は利用しにくい」と回答。
IFRS採用企業では「ポイント予想に対する投資家のニーズが強く、レンジ予想は利用しにくい」と回答した割合が大きく増加する。
その他自由記載によるレンジ予想を行わない理由に回答では
必要性が低い
有用性が低い
コスト(設定コスト、運用コスト、説明コスト)が大きい
の三つに大別される。
業績予想の開示のあり方
レンジ予想がポイント予想よりも望ましいとする場合について多かった回答
経営環境が年度内に大きく変化する場合
業績が年度内に大きく変動する場合
IFRS採用企業の方が日本基準採用企業よりもレンジ予想に否定的な意見が多い。
レンジ予想よりも非開示が望ましいと考える割合は全体的に低い。
感想
業績予想については実務経験がないため、興味を持って拝読しました。
まず、複数シナリオを持っている企業が6割程度というのが意外と少ないなという印象です。いくつかのシナリオ数値を単純平均や加重平均して業績予想開示しているものと勝手に思い込んでいました。
また、保守的な業績予想を開示する傾向については、上方修正よりも下方修正を嫌うことを考慮すると、当然の結果に思われます。
レンジ予想については、投資家やアナリストの立場からすれば利用し辛いというのは理解できるところで、実際目にする機会も少ないです。開示する企業の態度としてはある意味誠実だと思いますが、実務上は保守的な数値でポイント予想を開示せざるを得ないのかも知れません。
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