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株式会社ファーストリテイリングの2021年8月期決算短信

  • 佐藤篤
  • 2021年10月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:2021年11月1日

先日経済ニュースを視ておりましたら、株式会社ファーストリテイリングの2021年8月期決算が過去最高益だったとのことで、早速決算短信をみてみました。

損益に関する分析は様々なメディアで記事にされていると思いますので、ここではその点には触れず、その他の、一会計士として気が付いたところと感想を述べたいと思います。


現金及び現金同等物が多額

2021年8月末残高が1兆1千億777億円あり、総資産のおよそ47%を占めます。

キャッシュフロー計算書をみますと財務活動は前期も後期も純額で支払なので、元々悪くない財務体質は更に改善されていますが、それでもこれだけの残高があります。今後どう利用していくのでしょうか。


運転資本が減少

前期から売上高が1,241億円増加しているのに運転資本は485億円減少しています。

前期は売上高が停滞し、その結果膨らんでいた在庫が減少した影響かと思ったのですが、在庫残高のみならず「売掛金及びその他の短期債権」残高も減少しています。決算月である8月の売上高が前年同月より少なかったことが影響したようです。

ただ、それなら在庫残高も増加しそうなものです。この点は2021年8月期にJ Brand.Inc.を清算した影響かも知れませんが、詳細まではわかりません。


資本における「その他の資本の構成要素」

2021年8月末残高が410億円で前期末残高の47億円から大きく増加しています。

増加の内訳は183億円が在外営業活動体の換算差額、180億円がキャッシュフローヘッジのようです。後述しますが、為替が円安に振れた影響と想像します。


為替の影響

その他収益の内訳に在外営業活動体の累積為替換算差額の振替額が87億円計上されています。2021年8月期にJ Brand.Inc.を清算したことによる純損益振替額とのことです。

また、営業活動から生じた為替差益が29億円(前期が16億円)、営業活動以外から生じた為替差益が192億円(前期が15億円)となっており、円安に振れた影響が損益に反映されています。


WACCが高くなっている

減損会計の使用価値測定に用いられる割引率は前期が7.1%だったのに対して、2021年8月期が8.9%と高くなっています。算定方法については、加重平均資本コストを基礎に算定と説明があります。割引率が高くなった要因として考えられるのは、社債を1,000億円償還したこと、利益計上で親会社所有者帰属持分比率が39.7%から44.5%増加したことが考えられます。


まとめ

多額の現金及び現金同等物を今後どう活用していくのか気になります。

ただ、配当増額や自社株買いを予想して株式を購入するにしても最低単元で8百万円弱の資金が必要であり、個人投資家には厳しい銘柄で、早々に諦めました。

その他、特に気になるような点もなく、さすが日本を代表する企業の一つだな、と感心させられた決算でした。

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