最近知った原価計算方法「バックフラッシュ・コスティング」~「企業会計」2022年4月号~
- 佐藤篤
- 2022年6月7日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2022年4月号の原価計算基準特集の一記事「自動車産業における原価計算基準の弾力的適用」に「バックフラッシュ・コスティング」なる原価計算方法が紹介されていました。
こんな原価計算方法があったとは当該記事を読むまで知らなかったのですが、面白い方法だなあと思いましたので、その概要メモをシェアしたいと思います。
バックフラッシュ・コスティングはトヨタの米国工場がモデル。ジャストインタイム生産環境にあり、在庫が無視できるほど少ない企業が採用できる。
特徴は原材料勘定・仕掛品勘定・製品勘定・売上原価勘定の統合。
例えば、製品在庫の変動を把握する必要性が小さければ、期中は製品の出荷数量=生産数量と考えて出荷数量に部品表積上原価を乗じて算出した売上原価の金額を製品勘定から仕掛品勘定の貸方まで逆計算により通過させれば良い。
原材料倉庫内の素材や購入部品の在庫金額の変動を常時正確に把握する必要がないのであれば、当月受入分を全て生産工程に投入したとみなして原価計算することに大きな問題はない。
このような原価計算方法をとることで、実際の在庫変動は統合された仕掛品勘定に全て集約されてしまうため、工場内に何がどこにいくらあるかは経理上不明となる。
しかし、IT技術が未成熟な環境下においては、詳細な受払の継続により発生する製造部門や原価計算係の負担を軽減するメリットが大きかった事は容易に想像できる。
自動車産業の多くではバックフラッシュ・コスティングを適用することで継続記録法は採用しておらず、実地棚卸によるたな卸計算法に基づく売上原価と在庫在高の確定を行っている。
感想
かなり割り切ったやり方ですが、在庫が無視できるほど少ない状況なら継続記録法により低減される原価より費やすコストの方が上回ると言える訳で、合理的な方法だなと感心しました。
IT技術の発展した現在でもこの方法が採られているのかはわかりませんが、自動車業界では継続記録法で歩留差異や棚卸差異をキッチリと把握して原価改善を行っているというイメージを勝手に持っていたので、かなり意外性があり、面白く読んだ次第です。
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