最近の不適切会計事例~㈱出前館と㈱メタリアル~
- 佐藤篤
- 2021年12月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年1月21日
最近の不適切会計事例を二つ紹介したいと思います。
ここで不適切会計としたのは、誤謬(意図的でない虚偽記載)と不正(意図的な虚偽記載)の何れの可能性もあり得るためです。
株式会社出前館(以下「出前館社」)
2021年11月30日に「第22期有価証券報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出に関するお知らせ」と題したリリースが出されております。
内容としては債権債務(未収入金・未払金)の残高違いと外注費の計上漏れのようです。
どちらも債権債務の過大過少計上の問題ですが、例えば期中は現金ベースで会計処理しており、決算の時だけ未収未払を計上する方法をとっているような場合、決算作業の成熟度が低く、処理ミスをしてしまうようなケースもあります。
ただ出前館社は上場企業で、上場の際の審査において月次での決算管理の運用を求められているはずであり、毎月未収未払処理を行っていたと推測され、決算作業への慣れの問題ではないと考えるのが妥当です。
また、たまにですが、債務者から請求が来なかったために計上しなかったという事例があります。こういった事例においては、会計監査人は見積りで債務計上するよう指導します。もちろん少額な債務まで計上してしまうのは事務処理的に煩雑すぎるので、そこは相談の上、金額基準を設けて対応してもらうことになります。
いずれにしても、社内調査委員会を設置して調査を開始したとのことですので、近々原因も明らかになるものと思われます。
株式会社メタリアル(以下「メタリアル社」)
2021年11月30日に過年度の四半期報告書、有価証券報告書、内部統制報告書の訂正をまとめて提出されています。
不適切会計の内容としては収益認識および期間帰属の妥当性とソフトウェアの資産計上の妥当性に関するもののようです。
ソフトウェアの資産計上について紛らわしいのは、将来の収益獲得又は費用削減が確実である場合はソフトウェアとして資産計上できるのですか、それが不明な場合、税務上は資産計上、会計上は一括費用処理となり、両者で処理が異なる点です。
この相違に不案内だと、税務上の処理に引きずられる形で会計上も資産計上してしまうことがあります。
また、メタリアル社の事例とは関係ないのですが、研究開発費にはもう一つ要注意な会計処理があります。
それは研究開発費を当期製造費用で処理するケースです。
研究開発費を当期製造費用として会計処理すること自体は「研究開発費等に係る会計基準注解2」で認められているのですが、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」の4.で厳しく制限されています。
なぜかと言いますと、当期製造費用として会計処理した場合、その大部分が期末仕掛品となってしまうことがあり、結果として実質的に資産計上したのと変わりない会計処理になってしまうからです。
研究開発費を当期製造費用として会計処理する場合は予め会計監査人に相談されることをお勧めします。
Comentarios