暗黙の政府保証~「企業会計」2024年3月号~
- 佐藤篤
- 2024年4月19日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2024年3月号『「暗黙の政府保証」が企業・市場の動きを変える?』(原口健太郎)を読んでみました。
当該記事の趣旨について、冒頭部に以下のような記載があります。
「本稿では、逆に会計情報がその価値を失う場合があることに注目したい。具体的には、債券市場における暗黙の政府保証を議論する。」
以下、メモ書きです。
暗黙の政府保証とは
端的に言えば、政府救済の期待に基づき生じるクレジットリスクの低減である。
政治的なつながりのある企業(取締役会の中に含まれる国家元首や国会議員経験者数等を分析して定義された概念)の救済可能性は他企業よりも有意に高いことを実証した研究がある。
暗黙の政府保証の対象となるのは一般に非政府保証債。
暗黙の政府保証の強弱は、市場の救済への期待の大きさによって増減することが予想される。
暗黙の政府保証が生じる原因を「大きすぎて潰せないことによる効果」と「政府とのつながりによる効果」に区分し、それぞれの効果がクレジットリスクの低減に寄与することを確かめた上で、中国における公営企業(SOE)破綻という重要なイベントの後は、当該低減効果が減衰することを実証した研究がある。併せて、SOE破綻後の債券市場において、格付けが金利スプレッドに与える影響が破綻前よりも強まったことが指摘されている。
暗黙の政府保証は、公営企業の負債コストを引き下げるものの、同時に、公営企業の投資活動も抑制し、経済的な非効率性を引き起こす可能性が指摘されている。
日本における研究
地方公共団体が発行した地方債に関して少数ながら研究蓄積が存在する。
地方債は、制度上は非政府保証債であるものの、中央政府による監督や財政援助等の様々な要因により、そのリスクは事実上国債と等しいと解釈されることがあり、その背景の理論として暗黙の政府保証の概念が用いられる場合がある。
感想
この政治絡みで市場原理が曲げられる系の研究は読んでいて結構面白いし、直感から外れた結果になることは少ない気がします。
ただ、暗黙の政府保証が公営企業の投資活動を抑制するということですが、それが何故なのか私にはわかりませんでした。
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