日糧製パン㈱の特別調査委員会の調査報告書を読みました
- 佐藤篤
- 2023年8月1日
- 読了時間: 3分
2023年7月27日に日糧製パン株式会社(以下「日糧製パン社」)が「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」(リンク)をリリースしておりました。
以前のエントリーで触れたように、今回日糧製パン社で発生した不正は、ある特定の部署で、実地棚卸を行うルールになっているにも関わらずこれを実施せず、適当な数量を記入するという雑な方法で行われていたようです。
しかも驚くべきことに、その状態が2年も継続していたらしいのです。
どうやったらそんなことが可能になるのか、個人的に気になっており、調査報告書を楽しみに(?)しておりました。
詳しくは調査報告書を読んでいただきたいのですが、結果としては以下のような要因によるようです。
日糧製パン社の月寒工場(今般の不正が発生した工場)の在庫については、倉庫在庫と現場在庫があり、相対的に金額的重要性が高い倉庫在庫の期末実地棚卸には経理部の立会が行われていたが、現場在庫の実地棚卸には立会は行われていなかった。
月2回の実地棚卸にあたって、生産管理部と経理部のそれぞれが関与していたこともあり、現実には現場在庫の棚卸数値の分析をすべき責任の所在が曖昧なものとなっていたため、在庫の回転期間分析や増減要因分析が実施されていなかった。
首謀者であるA部長は、周囲から物言いがきつく周囲が異を唱えにくい人物であると認識されていた。
従業員相談窓口について、運用上は匿名であることを理由に受付が拒否されることはなかったが、利用する従業員の方にそのような認識がなく、十分に利用されている状態ではなかった。
個人的に想像していたとおり、決算タイミングでも現場在庫への実地棚卸の立会が行われていなかったようです。
そうだとしても、在庫残高に異常値が出て、誰かがおかしいと気付きそうなものですが、そのような視点での数値チェックも行われていなかったとのこと(ただ、この点は気が付いていたけれどもA部長が怖くて指摘しなかっただけの可能性もありそうです)。
在庫管理に係る内部統制が弱かったと言わざるを得ませんが、その根本原因について、調査報告書では以下のようにコメントしています。
そもそも現状の人員体制では不足があると思われることから、二次的チェック機関の人員体制を量的に増強することを検討すべきである。
営利企業において、利益を上げることに強い関心を持つことは当然のことである。しかし、短期的指標に偏重することは、長期的には組織に歪みをもたらし、持続的な事業継続に支障を来すことになりかねない。
この指摘、比較的規模の小さい上場企業には概ね当てはまりそうな気がします。
そして、日糧製パン社がこの指摘をクリアするためには、MBOなりEBOなりして上場廃止するしかないのではないかと感じました。
二次的チェック機関の人員体制を量的に増強するのは、ある意味お金を生まない業務に人員を張り付けることになりますし、仮にそれが出来たとしても、上場している以上、四半期で一定の業績は確保しなければならず、短期的指標への偏重は解消困難です。
その点、上場廃止してしまえば、上場維持のための工数を削減でき、内部管理に人を回すことができますし、短期的指標を気にすることなく経営することもできるようになります。
皮肉ではなく、結構まじめにそう思っているのですが、一顧だにされないでしょうね。
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