日本の会計・監査規制は過剰なのか~「企業会計」2022年3月号~
- 佐藤篤
- 2022年5月3日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2022年3月号の特集は「グローバル化で規制過剰に!?岐路に立つ日本の会計・監査規制」でした。
会計不正の見逃しが相次ぐ中、規制される側の公認会計士としてその規制の内容に意見するのは憚られるのですが、当該特集記事の中に「言いたいことを代弁してくれているな」と感じた部分がいくつかありました。
以下、そのように感じた箇所の個人的メモをシェアしたいと思います。
3つの視点で俯瞰する会計・監査規制の現状と課題(福川 裕徳)
新たな規制が導入される時にそもそもその規制が必要とされるのはどのような問題に対処するためなのか、その問題の根本原因は何かといったことが十分に明らかにされていないことが、規制の必要性を評価することを困難にしている。会計不正や監査の失敗が生じた場合、規制当局や基準設定主体は状況を精査し、その根本原因を把握した上で新たな規制を構想しているのかもしれないが、少なくとも日本の場合、その詳細が十分に公にされないため、新たな規制の必要性や適切性を評価することが困難となっている。
日本では、一般に、新たな制度や基準が導入されても、それが意図する目的を適切に果たしているかどうか、意図せざる帰結をもたらしていないかどうかが規制当局や基準設定主体によって公に評価されることはない。その結果、看過できないほどの問題が生じない限り、一旦導入された規制が見直されることは少ない。
制度や基準を評価する研究が行われている場合であっても、日本において、そうした研究結果の蓄積が、新たな規制を導入する際にどこまで活用されているのかについては疑問が残る。なぜなら会計基準にしろ監査基準にしろ、国際基準の動向を無視して日本独自の基準を設定することが難しくなっているから。
どれだけ綿密に設計したとしても、規制が意図した通りに機能し、意図せざる帰結はもたらさないという保証はない。そうであれば、規制はその導入後、常に評価の目に晒されなければならないと考える。
会計プロフェッションを取り巻く規制環境の変化(觀 恒平)
規制の厳格化が目的に沿った結果を果たして出せているのか
会計プロフェッションの行う監査・保証業務が規制されることについて異論はない
規制強化が継続的に行われると、監査現場は、規制の中身にもよるが、監査品質を向上させることよりも規制に対応することが目的となってしまう。監査先の企業に対して監査を行うというより、検査で指摘を受けない監査、基準だけを追って実態から離れた監査を行うようになりかねない。
財務報告システムの他の構成者、例えば、財務報告を行う企業経営者に対する規制がバランスよく正しく行われているかも検討が必要。
規制強化は、そのバランスを考慮して目的達成が最大化するように設定することが肝要であるし、規制の強化と監査品質との関係については、実証的な分析をすることで規制の効果とコストがよりはっきりするのではないか。
私自身、規制自体は必要だと思っていますが、両著者がおっしゃっているように事後評価とその結果に基づく規制の改良や撤廃も必要だと思っています。
この特集を機にそうなってくれると良いのですが。
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