工事損失引当金のセグメント区分~清水建設㈱~
- 佐藤篤
- 2024年2月9日
- 読了時間: 2分
決算開示関連ネタがしつこく続きます。
清水建設株式会社(以下「清水建設社」)が2024年3月期第3四半期決算を発表しておりましたが、かなりの赤字決算で、通期予想も大幅に下方修正しているとのことで、早速決算短信をみてみました。
まずは決算短信のサマリーです。

確かにすごい赤字です。
赤字要因は工事損失引当金の計上です。

残高ベースですが、前期末(2023年3月末)から約560億円増加しています。
清水建設社は某大型案件で苦戦しているという噂もあったので、引当自体に驚きはないのですが、その額には驚かされます。
ここまではまあいいのですが、個人的に気になったのがセグメント注記です。
前年同期(2023年3月期第3四半期)です。

当四半期です。

清水建設社の報告セグメントは「その他」含め3つですが、いずれのセグメントも損益はプラスです。
上述の巨額引当はどこに行ったかというと、「調整額」に含めているようです。
実際、「調整額」のセグメント利益が、前年同期の△11,909百万円から当四半期は△87,709百万円へ大幅に悪化しています。
この点、工事損失引当金は個別の工事案件に紐づきますから、「調整額」に含めるのはおかしい気がするのですが、脚注に以下のように記載されていました。
(前略)なお、報告セグメントの利益には、引当金の繰入額及び取崩額を含んでおりません。
この清水建設社の開示方法自体は、現行のマネジメント・アプローチの枠組みの中では間違いではないですし、会計監査人も口出しできる部分ではありません。
とは言え、何となくモヤモヤとしてしまいます。
セグメント注記がマネジメント・アプローチになって、開示する企業側にとってはやりやすくなったのでしょうが、開示の継続性もガバガバになったし、個人的にはいまだに好きになれません。
改正前のセグメント開示を知っている同業者がどう思っているのか聞いてみたい気分です。
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