定時株主総会の延期と継続会
- 佐藤篤
- 2021年1月27日
- 読了時間: 3分
緊急事態宣言が発令されてから1ヶ月近くが経とうとしています。
昨年は4月5月に緊急事態宣言が発令され、3月期決算会社の決算作業及び会計監査に多大な影響が及びました。その点、今回の緊急事態宣言は3月期決算会社にとって昨年ほどの影響はないかもしれませんが、一方で感染者の減少ほどは重症者が減っておらず、緊急事態宣言が当初の予定よりも長引く可能性があります。また一旦解除されても状況次第では再度発令されないとも言い切れません。
そんな状況を受けて「企業会計」2020年2月号に株主総会スケジュールの記事が掲載されておりました。詳しくはその記事を読んでいただくとして、ここではその記事のポイントを簡単にシェアしたいと思います。
そもそも会社法上基準日時点の株主が株主総会で行使することのできる権利は当該基準日から3か月以内に行使するものに限られるとされています(会社法第124条第2項)。
そして多くの会社では期末日を基準日とする旨定款に定めていることから、期末日から3か月以内に定時株主総会を開催するケースが大半となっています。
このような状況で定時株主総会を期末日から3か月経過後に開催延期する場合、会社は新たな基準日を設け、その2週間前までに公告をしなければなりません(会社法第124条第3項本文)。
そうしますと特に配当受領を目的として株式を保有していた株主については、新たな基準日までの期間に株式を売却してしまっている場合、配当の受領を巡って会社とこれらの旧基準日時点の株主との間で何らかのトラブルに発展するリスクがあり、現実的には定時株主総会で配当決議を行う予定の会社は定時株主総会の延期は困難です。
その様な場合は継続会(会社法第317条)を開催することが現実的な対応になります。
具体的には例年通り期末日から3か月以内に定時株主総会を開催し、そこで配当の決議を含む、計算書類の報告と監査報告以外の決議を行います。
その後継続会において計算書類の報告と監査報告だけを行います。
そうすることで期末日時点の株主へ配当することが可能になります。
この場合の分配可能額の計算は、2021年3月期決算の場合、2020年3月期の確定した決算数値を基に計算されますか、2021年3月期の決算数値の見込も考慮に入れた上で配当額を算定しておくのが望ましいとされています(「継続会(会社法317条)について」令和2年4月28日参照)。
継続会を開催するデメリットとしては、定時株主総会と継続会2回開催する必要があり、コストがかさんでしまうことで、なかなか万事めでたしとはいかないようです。
「企業会計」2020年2月号では、株主総会スケジュールに係る記事以外にも「withコロナ時代の決算の課題」という特集で様々な決算上の課題を取り上げて記事にしておられますので、気になる部分だけでも一読されることをお勧めします。
Comments