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四半期開示の見直しに伴う監査法人等による保証の方向性~「企業会計」2022年9月号~

  • 佐藤篤
  • 2022年9月16日
  • 読了時間: 3分

「企業会計」2022年9月号の特集は『決算短信「一本化」へ 四半期開示の見直し』でした。その中の一記事「信頼性を確保する保証業務のあり方」(山浦久司)を読んでみました。


四半期報告書の制度化から現在までの流れ

  • 四半期報告書の公表が義務付けられたのは2008年4月1日に始まる事業年度から。

  • 2011年に四半期報告書、さらに2017年に四半期決算短信の簡素化が実現したが、作成者側が望む両開示情報の重複感と負担感の解消にまでは至らなかった。

  • 岸田総理が四半期情報開示の見直しを表明。

  • 2022年6月13日に「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告-中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて-」(以下「DWG報告」)が公表された。

  • DWG報告によれば、金商法の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化する。一本化の具体化に向けた課題(義務づけのあり方、開示内容、虚偽記載に対するエンフォースメント、監査法人によるレビュー等)は、検討継続するとしている。新たに半期報告書が課せられる。


監査法人等による保証について

  • 現行の四半期レビューと有価証券報告書に対する監査という保証体制は、世界でも最も厳しいものと言われている。このことが情報作成者側の負担感を強くしている理由の一つになっている。

  • 改正の方向性としては、四半期決算短信に対する監査法人等の保証は明確には求められず、半期報告書の中間財務諸表と有価証券報告書の年度財務諸表が保証の対象となるが、その点はまだ確定的ではなく、引き続き検討課題とされている。

  • 中間監査を全ての上場会社に義務付けることになる。

  • 現行制度では、四半期決算短信を四半期報告書よりも早期に公表する際も、やがては監査法人等の四半期レビューを受けるという牽制効果があるために、四半期決算短信の虚偽的な公表は抑えられるという面がある。四半期レビューがなくなれば虚偽記載リスクは高まる。

  • この点DWG報告では、四半期決算短信を金商法上の臨時報告書として開示することにすれば、臨時報告書に課される虚偽記載に係る法的責任が作成者側にかかるので、一定のエンフォースメント(責任を伴う要請)がなされ、四半期レビューに代わる効果が得られるのではないかとしている。

  • 中間監査はいわば「四半期レビュー超、通常監査未満」という保証水準を達成するとされる仕組みだが、監査と四半期レビューの間のどこに中間監査の保証水準が定められるかは、監査実施者の判断次第ということになる。

  • 著者である山浦先生の私案としては、四半期レビューは廃止しない。そして、四半期決算短信と四半期報告書の開示内容を双方から接近させ(ただし、企業存続情報、後発事象等の重要情報の開示は何らかの形で担保する)、開示時期を現行の四半期決算短信と四半期報告書の中間に置く。


感想

四半期開示情報に対する監査法人等によるレビューが無くなれば虚偽記載リスクが高まるのは自明です。「今でも虚偽記載はよくあるじゃないか」と言われるかもしれませんが、監査法人等によるレビューが無くなれば、この程度では済まなくなると思っています。


監査法人等によるレビューが無くなると仮定して個人的に嫌なのは、継続企業の前提や偶発債務や後発事象に係る注記が義務付けられた場合に、会計監査人に相談なく該当なしと開示されてしまう事です。

その点を考慮しても、上記の山浦先生の私案は一定の説得力があると感じました。

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