同意なき買収への対抗措置が正当化される理由~「企業会計」2024年11月号~
- 佐藤篤
- 2024年11月26日
- 読了時間: 2分
㈱セブン&アイ・ホールディングスの買収を巡る動きが世間を賑わせています。
動く金額が金額なのでかなり驚かされましたが、これだけ円安が進むと、外資にとっては日本企業を安く買うチャンスな訳でして、今後もこのような話が複数出てきてもおかしくない状況だと思っています。
それに合わせた訳ではないのでしょうが、「企業会計」2024年11月号からの新連載「経営に活かすセルフ・バリュエーション」(吉村一男)で、同意なき買収に係る対抗措置について触れられていました。
個人的には「同意なき買収への対抗措置は経営者の保身が目的なのだろう」程度の認識しか持っていませんでした。
当該論考にも以下のような記載があります。
しかしその後の裁判では、株主の利益を守るのではなく、「買収を封ずる」ような対抗措置の発動が認められたため、日本のルールは、「買収者に厳しく、経営者に寛容なルール」と評されてきた。
しかし、そのような私の見方は偏っていたようです。
以下、当該論考から、該当部分のメモ書きです。
「同意なき買収」は、資本を有効活用するための重要なメカニズムであるにもかかわらず、その対抗措置は、なぜ正当化されるのか。
(その1)最初の買付条件を有利に、二段階目の買付条件を不利に(あるいは明確にしないで)設定し、最初の買収に応じなければ、不利益を被るような状況を作り出し、株主に売り急がせることがある。これは「構造的強圧型」と呼ばれる。
(その2)株価が低迷する中で買収提案が行われ、買収価格は不適切だが、事前に買収者が取締役会と十分な協議を行うことなく、いきなり買収を仕掛けるような場合には、取締役会がより優れた代替案を提示する機会が失われ、結果的に株主の利益も損なわれる。これは「代替案喪失(機会損失)型」と呼ばれる。
(その3)企業の将来の成長性や過去の投資の効果、さらには買収者の提案内容が不正確な場合には、株主が十分な情報を得ないまま買取価格の高低のみで判断を行い、企業価値を相対的に損なう買収提案に応じてしまう。これは「株主誤信(実質的強圧)型」と呼ばれる。
いずれも「言われてみればその通り」な内容で、”対抗措置=悪”と決めつけるのは誤りだと気付かされました。
日本でも「企業買収における行動指針」公表後、状況は改善されてきているらしく、このままいい方向に進んで欲しいと思います。
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