原価計算実務の現状とブラックボックス~「企業会計」2022年4月号~
- 佐藤篤
- 2022年5月17日
- 読了時間: 2分
先日弊ブログで取り上げた(リンク)「企業会計」2022年4月号『「原価計算基準」は生きた化石か』という特集の続きです。
今回取り上げる記事は「エネルギーインフラ事業の原価計算」(石垣一郎)で、古河電気工業株式会社(以下「古河電工社」)における原価計算制度の現状と今後の課題について述べられています。
以下、当該記事のメモです。
尚、古河電工社は直接標準原価計算を採用しているとのことです。
昔は原価計算と言えば製造拠点の管理目的、計画通りにものづくりができているかに主眼が置かれていた。
現在の環境下で期待される収益獲得、投資採算、事業継続と社会課題の解決を満たしていくための評価尺度が原価計算であり、総原価の作り込みや、事業計画のマスタープランの作成の土台となるものと認識している。
ITの発達により、大容量データハンドリングや、集計作業といったルーティンワークとしての原価計算は飛躍的に改善された。業務効率化、日程短縮、属人化業務の標準化は大きな変貌を遂げ、最近ではブラックボックス化や、理念継承の懸念を感じるほどとなっている。
IT技術が発達した近年では、各企業、工場、製品の特性に応じた多くのバリエーションに対応したロジック構築について壁が低くなっていると認識しており、どのように原価を計算するかというよりも、それをどう活用するかに力点を移している。そのように考えるようになった理由としては、企業会計の理念に見積の概念が切り離せなくなったからだと認識している。
製造業のモノ売りからコト売り、いわゆるマネタイゼーションも大きな課題として検討している。
感想
ブラックボックスの話が出てきましたが、会計監査人にとっては昔から原価計算はブラックボックスな面がありました。
私が監査法人に入所した当初から原価計算はとっくにシステム化されており、人手が介在する要素は限定的でしたが、そういった要素がITの発達により益々強化されているようです。
古河電工社とは関係なく一般的な話として、原価計算は固定費の在庫への配賦で売上総利益以下の損益を調整できてしまうため、監査上のリスクは決して低くありません。
監査法人を退職してから大規模製造業の原価計算に触れる機会は無くなってしまいましたが、ブラックボックス化の進んだ原価計算を監査法人ではどうやって監査しているのか、機会があれば見てみたいものです。
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