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利益と営業キャッシュフローの乖離(その2)~㈱IHI 2022年3月期第2四半期決算短信~

  • 佐藤篤
  • 2021年11月12日
  • 読了時間: 3分

先日、ユニ・チャーム株式会社(以下「ユニチャーム社」)の決算短信について記事にしました。そこでは税引前四半期利益と連結営業キャッシュフロー小計の金額乖離について取り上げたのですが、今回は株式会社IHI(以下「IHI社」)について同じ論点を取り上げてみたいと思います。


IHI社の2022年3月期第2四半期決算短信に記載されている要約四半期連結キャッシュフロー計算書を見ますと、税引前四半期利益は266億円計上されているのに対し、営業キャッシュフロー小計は26億円となっており。多額の乖離が生じています。

ユニチャーム社は火災損失の影響により税引前四半期利益と連結営業キャッシュフロー小計の金額乖離が生じていましたが、IHI社の場合は事業内容そのものの要因によって上述のような乖離が生じています。


IHI社は重工業の企業であり、受注生産がメインとなっています。そのため営業債権債務には1年を通して以下のような残高の波が生じます。


営業債権

いわゆる売掛金ですが、3月中の完成・引渡が多い傾向があるため、3月末残高が1年で最大になり、第1四半期の4月から6月の間に回収される結果、各四半期末は3月末に比して低額に推移します。

契約資産

これは進行基準に係る資産勘定で、進捗に応じて増加していくため、四半期末は右肩上がりで残高が増加し、3月の完成・引渡に伴い営業債権に振り替えられ、結果的に3月末残高は比較的少額になります。

棚卸資産

重工業においては仕掛品のことですが、これは支出に伴って計上され、進捗に応じて原価へ振り替えられます。3月末残高が比較的少額になるのは契約資産と同じです。

営業債務

これは買掛未払のことですが、営業債権同様3月末残高が1年で最大になり、各四半期末は3月末に比して低額に推移します。

契約負債

これはいわゆる前受金のことで、完成・引渡しに伴い売上に振り替えられることから、棚卸資産同様 3月末残高は比較的少額になります。


上記を踏まえると、第2四半期の連結営業キャッシュフローに及ぼすそれぞれの影響は以下のようになります。

営業債権;プラス

契約資産;マイナス

棚卸資産;マイナス

営業債務;マイナス

契約負債;プラス


これをIHI社の第2四半期の要約連結キャッシュフロー計算書で確認してみると。

営業債権の増減額 +559億円

契約資産の増減額△124億円

棚卸資産及び前払金の増減額△364億円

営業債務の増減額△260億円

契約負債の増減額 +55億円

となり、上述の説明と整合します。トータルでは営業キャッシュフローに△133億円の影響となっています。


前回の記事では、税引前利益と営業キャッシュフロー小計の乖離には引っ掛かりを感じるということを書きましたが、IHI社のように事業性質上どうしても乖離が生じてしまうケースもあり、今回取り上げてみた次第です。

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