公立病院の経営状況に関する研修を受講してみました
- 佐藤篤
- 2022年5月27日
- 読了時間: 4分
3月期決算に係る監査繁忙期も少し落ち着いてきました。
年明け以降は3月期決算に関連する情報収集がメインになりがちでしたが、少し余裕が出てきたところで、全く自分の業務と関連性のない「公立病院の経営状況」と題された研修をオンライン受講してみました。
以下、そのメモを一部シェアしたいと思います。
公立病院の経営状況
診療報酬改定は公立病院には厳しかった。経常損益はH25年度以降どんどん悪化している。
自治体の設置する病院数は減っている。
大規模病院ほど医業収支比率は高い傾向がある。また、私的病院の方が医業収支比率は高い。
入院・外来とも患者数は減少しており、単価上昇が収益に寄与している。
DPC(診断群分類)に基づいた包括点数計算方式の採用により、不必要な検査や治療が行われないような仕組みがある。また、入院日数が短いほど単価が上がるような仕組みにして入院日数の増加を抑制させている。但しDPCは入院のみで、外来は従来通り積み上げにより点数算定する。
DPCの病院の方が非DPCより入院単価が高い。
公立病院の経営改善
地域包括ケアシステムと矛盾しない医療提供体制の構築が求められる。
経営の安定性には医師数の確保がキーになる。
市立福知山市民病院の事例
DPC対象病院となった翌年から黒字化
透析患者の受け入れ強化(民間医療機関が競ってやりたがる)
職員給与費対医業収益比率について、類似規模病院平均は50%超程度なのに対し、40%程度に抑えられている。こういう病院は委託費率が高いケースも多いが、人員を増やしているので該当しないと思われる。
救急患者数、分娩数いずれも増加している
クリティカルパス(標準工程表)の見直しにより単価がアップ。
人間ドック数を増加させた。何か異常があればすぐ検査を実施したり、患者として取り込めたりするので有用。
共同診察カードによる紹介・逆紹介の連携を強化
各種医療統計クリニカルインディケーターを継続して集計し公開している
再編・ネットワーク化
基幹病院に医師を集約してネットワーク内の医療機関に医師を派遣するシステムの構築(医師不足による共倒れを防ぐ)
公的病院、民間病院等との再編も想定
公立世羅中央病院の事例
二次医療圏は世羅町、尾道市、三原市
事務職や調理員、技能職は正社員の採用抑えて嘱託・パートを増やし、人件費を抑制。
45床あった三原市立くい市民病院を無床にして公立くい診療所とした。その分、公立世羅中央病院の病床数を増加させる再編を実施。
SPD導入により不良在庫削減
三原市の職員から世羅中央病院企業団へ身分移管に承諾しない職員もいた。
経営形態の変更
地方公営企業法の全部適用のメリットは事業管理者に対して人事予算等に係る権限が付与され、より自律的な経営が可能になる点にある。デメリットは地方独立行政法人化に比べて経営自由度の拡大範囲が限定的である点、条例の制約を受けてしまう点。
地方独立行政法人化(非公務員型)については、実際に地方独立行政法人化した病院において、人事面・財務面での自立性が向上し、経営上の効果を上げているケースが多い。
指定管理者制度の導入のメリットは、民間の医療法人等を指定管理者として指定することで民間的な経営手法の導入が期待できる点。デメリットは指定管理者の選定に失敗するとかえって病院機能が低下する点。また、モニタリングは欠かせない。
筑後市立病院の地方独立行政法人化事例
基準病床数に対して既存病床数が多く競争の激しい医療圏にある病院。
地方独立行政法人化したとたん経常収支比率が100%を超え改善した。
7対1看護体制化を実行し単価アップ。
在院日数短縮により病床利用率が低下しても収支が改善した。
地方独立行政法人化への取り組みとしてキーになるのは労働組合交渉
主な経営指標は類似規模病院と大差ないが、100床当たり入院収益だけ突出して高い。
院外コンサルタントの活用で診療材料費と医薬品費を大きく削減できている。
感想
純粋な知的好奇心だけで受講しましたが、自分の業務に直接関係ないにも関わらず、寧ろ関係ないからこそ、楽しめた研修でした。
医療分野には無知で、入院時における無駄な検査や不必要な治療がなされないような仕組みが整えられていることも初めて知りました。
また、講師の大西先生の話しぶりに落ち着きがあって聞きやすかったのも印象的でした。
たまには業務に関連のない研修を受講するのも良いものです。
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