偶発債務の重要性と注記~三菱電機㈱と東レ㈱の事例~
- 佐藤篤
- 2022年3月1日
- 読了時間: 2分
更新日:2022年3月4日
平日は、弊ブログのネタ探しを兼ねて、その日に株価が大きく上下した銘柄の解説記事を読む事を習慣にしています。
結構前になりますが、ある日の解説記事で東レ株式会社(以下「東レ社」)が取り上げられておりました。
内容は樹脂製品の認証登録に関連して不適切な対応があったことにより株価が大きく下落したというものでした。
品質関連の不適切行為といえば、以前弊ブログで三菱電機株式会社(以下「三菱電機社」)の事例をもとに、偶発債務の会計上の取り扱いに触れたことがあります(リンク)。
その後どうなったのかと思い、三菱電機社の2022年3月期の第3四半期報告書をみてみたところ、10.偶発債務と題して「現時点ではその影響額を合理的に見積もることが困難な為、要約四半期連結財務諸表には反映していません」と注記されていました。
どうやら第1四半期から状況に変化はないようです。
併せて東レ社の2022年3月期の第3四半期報告書もみてみました。
こちらにはそもそも偶発債務の注記自体が存在せず、代わりに第二【事業の状況】1【事業等のリスク】に「(1)当社樹脂製品における第三者認証登録に関する不適切行為について」という項目を設けて内容を説明されています。
それによりますと、「本件の対象製品に関連する費用が多額に発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。」とのことです。
同じ将来的な損失の発生可能性がある品質関連の不適切行為について、なぜ三菱電機社と東レ社で開示の仕方が異なるのかというと、あくまで私の推測ですが、三菱電機社の場合、連結財務諸表へ重要な影響が及ぶと言える程度に多額の損失が発生する可能性があるため、偶発債務の注記として開示しているものと思われます。
一方東レ社の場合、現状把握している事実から判断すれば軽微な損失に留まる可能性が高いが、今後の調査の過程で想定外の事実が判明して損失が膨らむ可能性に備えて、連結財務諸表の注記とせず、【事業等のリスク】に記載したのでしょう。
軽微でも将来的な損失発生の可能性があるのだから、三菱電機社同様、東レ社も連結財務諸表に偶発債務の注記として記載すべきではないか、との意見もあるかと思いますが、軽微なものまで注記してしまうと、財務諸表利用者を却ってミスリードさせかねないことになるため、会計監査人として、あえて記載しないよう提案することすらあります。
何でもかんでも注記しておけばいい、というものではないということです。
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