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倫理規則改正に関する企業側の懸念~「企業会計」2022年10月号~

  • 佐藤篤
  • 2022年10月21日
  • 読了時間: 4分

更新日:2023年1月23日

「企業会計」2022年10月号の倫理規則改正関連特集ネタはまだ続きます。今回は『企業から見た改正「倫理規則」』(井上隆)を取り上げます。


倫理規則の改正は公認会計士への規制であり、企業に直接影響が及ぶものではないのですが、当然間接的に影響が及ぶため、企業側の懸念を会計士として把握しておくことは有用なことと思われます。

以下、当該記事の中で個人的に気になった部分のメモと感想です。


社会的影響度が高い事業体(以下「PIE」)の監査において報酬依存度が15%を超える場合の5年目での監査人辞任について

  • 経団連の意見

報酬依存度が15%を超える年数については、規則の適用時から起算し、適用前に係る状況にあったとしても、適用前の年数は含めない、とすること。

  • JICPAの回答

適用初年度を1年目としてカウントすることについて、倫理規則の附則において明記される。


監査業務と同時提供不可となる非保証業務の範囲

PIEに限っては自己レビューが生じる可能性のある非保証業務の提供が包括的に禁止され、これまで重要性の判断に基づいて提供できていた業務が提供不可となる可能性がある。

  • 経団連の意見

    1. 非保証業務の提供について、これまで通り、重要性による判断を認めるべきである。

    2. これまで同時提供が認められていた非保証業務が今後も認められるか否かのガイダンスを、早急に(少なくとも適用時期の一年前には)策定すべきである。

  • JICPAの回答

    1. 1点目については、自己レビューという阻害要因の水準の識別または評価において、重要性は考慮しない。

    2. 2点目については、実務ガイダンスにおいて、判断のプロセスや明示的に禁じられている業務等についての考え方を整理する。


非保証業務に係る監査役等の事前承認

PIEまたはその子会社または親会社に非保証業務を提供する前に、PIEの監査役等に対して、非保証業務の提供が禁止されていないこと等を通知するとともに、非保証業務の提供についてPIEの監査役等の事前了解を得る必要があるとされた。

  • 経団連の意見

    1. 本規定は、企業に対してプロセス構築義務を課すものではなく、監査人自身の責任において非保証業務の提供についての情報をPIEの監査役等に通知する趣旨であることを、明確にすべきである。

    2. 大企業の中には、PIEが何社も存在し、PIEおよびその子会社または親会社に監査法人が非保証業務を提供する前に、逐一それぞれのPIEの監査役等の事前承認を得るのは、非常に煩雑である。よって、例えば、グループ内の企業が非保証業務の提供を受ける場合には、PIEではなく、最終親会社の監査役等の承認を得れば足りる等の、柔軟で現実的な対応を可能としてほしい。

  • JICPAの回答

    1. 1点目については、企業にプロセス構築を義務化するものではなく、あくまで監査役等とのコミュニケーションの過程で非保証業務の提供に関する了解を得ることを求めている。

    2. 2点目については、実務上のプロセスや留意事項、会社法との整合性に関する実務ガイダンスを提供する予定。


今後の課題

  • 非保証業務についての実務ガイダンスの作成について

    1. PIEに相当する多くの子会社を抱える親会社が、その監査人と非保証業務の契約を締結する場合に、グループ内のあらゆるPIEの監査役等の事前承認を必須とするのは不合理。

    2. IESBAの規定を原則としてそのまま我が国の倫理規則に落とし込むことを前提とするのであれば、その前提として、IESBAにおける国際基準の開発段階から、我が国のステークホルダーの意見をIESBAに対して発信していくことが肝要だが、実際には、IESBAでの検討段階から、国内関係者によるオールジャパンでの検討や意見発信の活動は十分に行われていない。


感想

最近は他の会計士と話していてもこの倫理規則の改正、特に報酬依存度に係る15%ルールが話題になることが多いです。

先日も15%ルールは遡及適用なのか否かが話題になり、当然遡及適用はないと思い込んでいたので、驚いたところでした。

一方で当該記事を読む限り、企業側の懸念としては、15%ルールもありますが、それ以上に非監査業務に係る規制、特に監査役等による承認が大きい印象を受けました。

EYが監査とコンサルの分離を急いだのも、この辺りの企業側からの懸念を受けてのことだったのかもしれません。

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