何故、「PBR1倍割れ」だったのか~「企業会計」2023年8月号~
- 佐藤篤
- 2023年9月8日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2023年8月号の特集は『中長期的な視点で考える「PBR1倍割れ問題」』でした。
その中の「企業の自社株買いと戦略変更の必要性」(野間幹晴)が示唆に富んだ内容でした。
今回は当該記事のメモ書きです。
JPX日経400算出開始時に起こったこと
2014年にJPX日経400の算出開始
指数に含める企業の選択基準として、営業利益率と株式時価総額に加えて、ROEを使用した。
その際、JPX日経400に選ばれるから選ばれないかギリギリに位置していた企業群では、
ROEが2.4ポイントから2.8ポイント上昇した。
売上高当期純利益率、配当性向が上昇した(売上高成長率、総資産回転率、レバレッジについては変化がなかった)。
研究開発集中度(研究開発費用を売上高で除した比率)が低下した。
研究開発費が削減された結果として売上高当期純利益率とROEが上昇した。
PBRはROE×PERで表せるが、企業価値を高めるためにROEの改善を要求すると、再びコストカットが実施され、リスクテイクや人への投資が行われなくなる可能性があったため、東証は「PBR1倍割れ」の改善を要求した。
2023年4月から5月(東証によるPBR1倍割れ解消要請後)に自社株買い枠を設定した企業の特徴(2023年3月期決算のみ)
2023年3月期決算でROEが8%未満の企業では、PBRが1倍を割っている場合に自社株買いの枠を設定する傾向があった。
一方、ROEが8%未満でもPBRが1を超えている企業では、自社株買いの枠を設定した企業の割合は相対的に低かった。
戦略変更による企業価値向上
日本企業が戦略を変更するのは、ITバブル崩壊後やリーマン・ショック、コロナ禍等の外生的な経済ショックが発生した時期であることが明らかになっている。
事業ポートフォリオや事業構造を大幅に組み替えたことで、企業価値を高めた企業に着目すると、2つの特徴が浮き彫りになる。
マクロの経済ショックの時期に限らず、戦略変更を実施している。
高水準の戦略変更を実施している。企業価値を高めた企業では、戦略変更の水準は平均値からの乖離が大きい。
感想
企業がROE向上のために研究開発費の削減やリストラを実施するとPERにはマイナスに働きやすくなるため、ROEではなくPBRの改善を求めた、という説明には納得感がありました。
また、ROEが低い企業で自社株買いが増加したのも直感に反しない結果です。
一方で、事業ポートフォリオや事業構造の大幅組替えによる企業価値向上が本筋だという点に異論はないのですが、ソニーや日立じゃあるまいし、そんなことが出来る人材を抱える企業がどれだけあるのだろう、と疑問を持ってしまいます。
私の見方が冷めすぎているのかも知れませんが。
Comments