会計監査経験者なら肯ける決算・財務報告プロセス上の問題点~「企業会計」2024年10月号~
- 佐藤篤
- 2024年10月25日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2024年10月号に「対談 全社レベルの決算・財務報告プロセスにおける課題」(玉井照久、浅野雅文)が掲載されていました。
内容は題名の通りなのですが、会計監査経験者であれば「あるある」と言いたくなるような具体的問題点がいろいろと述べられていたので、その部分だけを取り出してみました。
「企業側の仕事のゴールは数字を作るまでで、数字のチェックは監査法人がしてくれるもの」と企業側が誤って認識しているケースがある。
決算業務のゴールセットが数字作りまでで、後工程のセルフチェック手続が業務工数に見積られていないことで、経理部に十分なリソース・予算が割かれていないケースがある。
見積り関連科目や、回収可能性の検討等、期中に議論を終わらせておくべき論点について、決算期末が終わってから慌てて検討を始めて監査法人と紛糾するケースがある。
本来監査法人に資料提出する前に必要となる、経理部内でのセルフチェック、内部統制評価部門による内部統制評価が行われないまま監査法人に決済資料が提出されることで、監査法人とのやり取りが続き、結果的に時間がなくなる。
繰延税金資産の回収可能性や固定資産の減損などの会計上の見積りについては、社内で注目されて大勢が見ているが、これといった内部統制がないことがある。
企業結合会計の経験のある人が社内にほとんどおらず、バリュエーションレポート受領後にそれをどう企業結合会計の仕訳に反映させるのか理解している人がいない。
連結仕訳のチェックには作成者と異なるスキルが必要となるが、社内にそうした人材がいないことが結構ある。
キャッシュフロー計算書について、あまり社内で注目されておらず、間違っていても気がつかれないことがある。チェック自体も難しく、数年経過して発見されることもある。
小規模な企業では、スプレッドシートで連結決算を組めてしまうので、作成担当者にしかわからない膨大なファイルによりブラックボックス化していることがあり、その作成担当者がいなくなると連結決算が組めなくなってしまうことがある。
内部統制評価部門の評価について、仕訳伝票の上長承認の有無の確認のみなどの形式面のテストで終わっており、実質的な会計処理の誤りを発見できる粒度ではないケースがある。
減損会計について、本来事業部門が対応すべきところ、監査人を減損不要で押し切るのが経理の仕事となっていることがある。
どれもこれも身に覚え(?)があり、面白く読みました。
一方で、以下のような話もありました。
経理部の社内発言力を高める方法(の一つ)は、親会社のCFOがグループ全体の経理人材の人事を握ること。そうすることで、最後は本社が面倒を見てくれるという安心感が生まれ、例えば子会社出向中にそこのトップからグレーな会計処理を指示された時でも突っぱねることができるようになる。
実現のハードルは低くはないですが、多くの企業経理関係者およびコンプライアンスへの意識が高い経営者には有用なサジェスチョンだと思いました。
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