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会計監査現場の現在~「企業会計」2025年4月号~

  • 佐藤篤
  • 3 日前
  • 読了時間: 3分

「企業会計」2025年4月号の特集は「会計業界の人手不足問題を考える」でした。

その中から、会計監査業務の繁忙期真っ只中ということもあり、「会計監査の現場」(横山雄一)を読んでみました。

尚、著者の横山先生は太陽有限責任監査法人(以下「太陽監査法人」)に所属されています。

 

監査業界の仕事の総量

  • 監査対象の会社数全体が増加していることと、さらに1社あたりにかかる監査時間が増加していることによって、10年に亘って増加トレンドとなっている

  • 監査対象会社数は、法定監査の社数増加だけでなく、任意監査も社数が増加している。非営利法人への新たな監査制度の導入や、IPO企業の増加等が考えられる。

  • 1社あたりにかかる監査時間の増加要因は様々想定されるが、監査業務に要求される品質管理の基準が強化されていることによる影響があると考えられる。監査法人のガバナンス・コード、監査上の主要な検討事項(KAM)の報告制度導入、ISQM1およびISQM2を受けた品質管理基準の改定等が具体例として挙げられる。

  • 従来の、文脈を共有する専門家同士がハイコンテクストの検討と記録をすれば済んでいた時代から、より社会的責任を果たすためにローコンテクストで明瞭な検討と記録を要求されるという変化が起きている。この変化は、企業側からは実態が見えづらく、監査時間が従来に比べ増加している実感を伴わないことが多い。

 

監査業界の人的資源

  • 公認会計士の総数は10年で138%と着実に増加しているが、監査法人に所属する公認会計士の数は10年で109%と微増に留まっている

  • 公認会計士が監査法人に残留しない理由は様々考えられるが、実務の現場で顕著に聞かれるのは「長時間労働の負荷」と「精神的な負荷」である。特に監査現場の責任者となるプロジェクトマネージャー層(主査、主任、統括等と呼称される)の優秀な公認会計士には、過重な労働時間や精神負荷がかかることが想定される。

 

(対策1)公認会計士以外の人員活用~太陽監査法人の取組み~

  • 公認会計士でも公認会計士試験合格者でもない人員を「監査アシスタント」と一般に呼称して分業を行っている

  • 簿記資格を必要資格として監査アシスタントを採用し、採用後に公認会計士試験の範囲から監査理論や実務、企業法等の実務研修プログラムを受講する制度を構築している

  • 監査アシスタントを中核とする「シェアードサービス」部門を本部に組成し、各監査チームが分散して監査アシスタントに指揮監督せずとも、標準的な監査業務を切り出して集中実施する体制を合わせて構築している

 

(対策2)ITの活用~太陽監査法人の取組み~

  • RPA技術を用いて財務情報の分析表の自動作成を行っている。太陽監査法人独自の汎用形式に被監査会社の会計データをコンバージョンし、均一なデータベースに整えた上で、標準様式の財務分析表を生成するシステムを構築している。

  • プライベートクラウド環境でAIチャットツールを構築し、被監査会社の情報や業界情報をもとに企業の監査リスクの評価や監査上の対応手続に関する壁打ち、監査資料の要約・翻訳・加工といった作業に使われている

  • 複数の自動照合ツールの現場でのトライアル導入や、画像データの色調クラスタ分析を通じた証憑改ざんチェックツールを開発している

  • 「残高確認」の電子化

 

感想

面白く拝読しました。

私が監査法人に入所したころはまだ「ホワイト」な業界だったのですが、それはハイコンテクストな時代だったからなのだなあ、と懐かしく思い出しました。

 

太陽監査法人の取組みも面白かったです。

特に監査アシスタントを用いたシェアードサービス化はいいアイディアだと思いました。

監査アシスタントさんを現場で指導すると、どうしても教える側のレベルの高低で業務の質に差が出てしまうので、それを一定程度解消出来る試みとして優れていると思います。


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