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会計不正の現状~「企業会計」2023年7月号~

  • 佐藤篤
  • 2023年7月25日
  • 読了時間: 3分

「企業会計」2023年7月号の特集は「デジタル化・コロナでより巧妙に 会計不正にどう立ち向かうか」でした。

その中の「会計不正の現状と内部統制の有効活用」(市川克也)を読んでみました。


会計不正の現状分析

  • 過去の大きな不正会計の歴史を振り返ってみれば、大規模な経済変動の変化に耐えられなかった、もしくは対応できなかった企業において不正会計が発生するということが多く見られる。バブル経済崩壊後、ITバブル崩壊後、リーマン・ショック後など。

  • コロナ禍によるリモートワーク化、DX化の進展や海外子会社との交流の分断が不正会計の態様にも影響を及ぼしている。

  • なりすましによる不正行為が増加傾向にある。

  • 印鑑を使わなくなったことにより、不正を隠蔽するための電子データや電子ファイルの改ざんが容易になった。

  • 最近の傾向で特徴的であるのは、当局による摘発などによって突然、巨額の不正会計が発覚することが見られること。

  • 海外子会社での不正会計の発覚件数は減少しているが、コロナ禍による内部統制の有効性の低下により、以前なら簡単に発見できていた不正会計が、未だ発覚していないだけの可能性がある。

  • 不正会計の類型としては、売上、売上原価、棚卸資産に対する不正会計がほとんどを占めているという点において、過去と状況に変化はない。

  • 不正会計の関与者としては役員、管理職が過半数を占めているが、この傾向も従来と同じ。

  • 特徴的なのは経理部員による現金横領などの不正が目立つということ。経理部員相互の牽制機能が低下しているためと思われる。

  • 在庫の過大計上の不正の発覚件数が近年減少しているが、これは現場での棚卸立会手続が十分に行えない状況が続いたことにより、単に発覚していないだけの可能性がある。

  • 不正の手口に共通するのは「ブラックボックス化」、すなわち一部の者しか取引の実態やビジネス内容を知らず、内部統制が十分に機能していないというケース。コロナ禍の影響によるリモートワーク、DXの進展により、新たな「ブラックボックス化」が起こっている可能性がある。


不正会計の対応の留意点

  • 不正会計が起こった会社において、職務分離が十分でなかったと事後的に評価される例は非常に多い。

  • 支店長やカンパニー長の指示により、不利な情報を本社経理部に送らせないようにするといった「情報と伝達」に問題が生じているケースがある。

  • 不正を発見しても、通報が経営者のために使われると諦め、通報しないケースがある。

  • 近年においてはPDFなどのイメージ文書の偽造が非常に多く発生している。

  • 内部監査部門のカバーする範囲が広範であるにも関わらず、①人数が少なく、予算も少額である、②報告に圧力が掛けられる、③監査役会などに対して直接伝達する機会がない、といった問題がある。


感想

リモートワークの進展による内部統制機能の低下というのは、納得のいく話です。

以前なら発覚していたであろう不正会計が、見つけられずにいる可能性があるという指摘は、一会計士として、怖さを感じます。

リモートワークを原則廃止にする企業が増加しているのも、この内部統制機能の低下を憂慮してのことかも知れません。


一方で、不正会計の類型として、売上、売上原価、棚卸資産が相変わらず多いというのは、「やりやすさ」へのコロナ禍の影響はないということでしょうか。

それとも今後「そうきたか」というような不正会計の新たなパターンが発覚するのでしょうか。

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