企業年金改革の方向性~「企業会計」2023年12月号~
- 佐藤篤
- 2023年12月26日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2023年12月号の連載OUTSIDEは「企業年金改革は慎重に」(前田昌孝)でした。
私には直接関係しないのですが、新NISAも始まりますし、現状を把握しておくべく読んでみました。
岸田政権の構想
資産運用特区の創設
「アセットオーナー・プリンシプル」を、2024年夏をめどに策定
当局が打ち出した企業年金改革案
運用成績の公表
予定利率の引き上げ
小規模年金の運用一本化
資産運用の専門家の配置etc.
当局の意図
企業年金を担当する常勤の理事には企業の人事部門や経理部門の出身者が多く、資産運用の専門家が少ないことは問題。
運用のプロを揃え、成果を公表して競争を促せば、リターンが増え、予定利率を引き上げられるという発想のようである。
予定利率を引き上げれば、達成のためにはおのずと内外株式などのリスク資産のウェイトが高くなる。政府が年末までにまとめる資産運用立国プランにもこの考え方を盛り込むようだ(注;12月13日公表済)。
現状の企業年金の運用実態
企業年金の会計基準が時価を重視したものに切り替わったため、基金には市場動向次第で積立不足が発生しやすくなった。そのため、企業年金はリスク資産に振り向ける資金を大幅に減らしてきた経緯がある。
企業年金連合会の年金改革に対する提案(9月29日にホームページで公表)で強調している事項
企業年金の株式保有比率が低下しているのは世界的な傾向
海外の公的年金や企業年金の制度設計や運用が必ずしもうまくいっているとは言えない
運用リスクを高めることは、年金の安定的な支払いを期待する加入者の利益にそぐわない面がある。
運用のプロを育成したり外部から雇ったりする負担は小さくない。
年金の担当者は運用委託先と何十回も議論を積み重ねており、その過程で十分にプロになっている。
感想
当局が予定利率の引き上げを求めるのは「国として今の現役世代の引退後の面倒はみるつもりはない」という意思の現れのように思われます。
新NISAの導入もその一環でしょう。
また、株価と政権支持率は比例するなんて説もありますから、時の政権が株を買わせたがるのはある意味当然です。
一方で新NISAでは、S&P500やオールカントリーのインデックス・ファンドへの投資が主流になりそうで、政権側の意図どおりに事は運ばない気もします。
いずれにせよ、2024年夏の「アセットオーナー・プリンシプル」の公表を待ちたいと思います。
Comments