人事評価におけるバイアス~「企業会計」2025年3月号~
- 佐藤篤
- 4月11日
- 読了時間: 2分
弊ブログでは、個人的興味から、たまにではありますが、「バイアス」に係るエントリーをアップしてきました。
今回は、その「バイアス」に関連して、「企業会計」2025年3月号から「主観的業績評価とそれに伴うバイアスについて」(森光高大)を取り上げます。
主観的業績評価が必要となる背景
業績評価にあたって常に客観的な評価指標が得られるとは限らない。特に人事評価などの場面については、売上高や営業利益などの客観的な指標に基づく評価は難しい傾向にあり、このような状況下で主観的業績評価が用いられる。
主観的業績評価におけるバイアス
(個人の属性が主観的評価に影響を及ぼす例に関する研究)
米国企業のセールス部門の従業員の人事データを対象に、従業員の評価が実際の生産性にかかわらず、人種によって変わりうることを示した
(寛大性、中心性バイアスを実証した研究)
寛大性バイアスとは、評価者が妥当な水準以上に高く評価結果をつけてしまうバイアスのこと
中心性バイアスとは、評価結果の分散が小さくなり、狭い範囲に固まってしまうバイアスのこと
オランダ企業の人事データを用いて実証を行った結果、複数の指標を用いると評価結果が圧縮され、より寛大な評価になり、主観的指標を使用する場合さらに顕著になることを示した
(「寛大性、中心性バイアスが組織にとって悪なのか?」を検討した研究)
オランダの金融機関の人事データを用いて、情報収集のためのコスト及び従業員と雇用主との間の強力な関係が、中心性バイアスと寛大性バイアスに影響を与えることを示した
実証の結果、中心性バイアスは成果に負の影響を与えているが、寛大性バイアスは成果に対して負の影響を与えるという有意な結果は出なかったことも示した。
主観的業績評価における恣意性
(評価者の「ひいき」を組み込んで行われた数理モデル分析)
主観的な評価は業績管理に必要不可欠である一方で、その裁量が無制限であると非効率性や不公平が生じることを指摘している
感想
私も過去に組織に属していた時があり、人事評価する機会があったのですが、思い起こすと寛大性・中心性バイアスに捉われていたような気がします。
また、著者の森光先生が以下の様に感想を述べられています。
バイアスが必ずしも組織業績に悪影響を及ぼすわけではない可能性があるという結果も提示されていることは興味深い。
これには私も同意するところで、過去の人事評価の誤り(?)への多少の慰めになりました。
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