不正に起因しない過年度決算訂正事例~㈱いなげや~
- 佐藤篤
- 2023年11月17日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年11月25日
2023年11月14日に株式会社いなげや(以下「いなげや社」)が「過年度の有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出(過年度決算の訂正)に関するお知らせ」をリリースしておりました。
有価証券報告書の訂正報告自体は何も珍しいことではないのですが、今回のいなげや社の事例が特殊なのは、不正会計に起因していないにも関わらず損益数値の変更を伴う訂正である点です。
そもそも訂正報告に至った経緯としては、有価証券報告書に係る監査報告書が提出された後に、会計監査人である仰星監査法人の内部レビューにより資産除去債務に係る繰延税金資産の会計処理誤りを指摘され、それを受けて、いなげや社に訂正を求めたということのようです。
実際に当該リリースを読んでみると分かりますが、いなげや社は怒り心頭に発しています。
説明も分かり易いので、一読されることをお勧めします(リンク)。
こうなった背景を考えてみますと、監査チームの単なる見落としなのか、証拠を積み上げて回収可能性ありと判断し、且つ監査法人内部の決算審査も通った会計処理を引っくり返されたのかは判りませんが、資産除去債務に係る繰延税金資産の計上可否は判断が難しい論点であることは確かです。
また、いなげや社の2023年3月期連結経常利益が2,184百万円なのに対し、今回の訂正額は948百万円(法人税等調整額以下の訂正のため、連結経常利益には影響なし)なので、会計監査上重要性があるのも間違いありません。
考えられるとすれば、進行期いっぱいでの会計監査人交替(の見込)を受けて、監査法人側が訂正を要求した、という可能性です。
後継の会計監査人に”クロ”とされかねない会計処理を予め訂正させておくという判断を現監査法人がしたとすれば、合点がいきます。
いずれにしても、珍しい事例ではありましたが、これからちょくちょく同様の事例が出てくるかもなあ、とも感じました。
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