上場のベネフィットとコスト~「企業会計」2024年9月号~
- 佐藤篤
- 2024年9月24日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2024年9月号に掲載されていた「上場のベネフィットとコスト:改めて考える「上場」の意義」(神尾篤史)を読んでみました。
正直、目新しいことは書かれていないのですが、現状のまとめとして有効な論考だと思います。
以下、メモ書きです。
上場廃止の増加
2022年4月の市場区分の見直し前後から、コーポレート・アクションによる上場廃止が増加している。
非公開化に向かう要因
1.上場維持基準に抵触して、上場廃止となる可能性を踏まえての選択
市場区分見直し前は上場廃止基準が低い水準に設定されていたが、見直し後は新規上場基準と上場維持基準の水準がほぼ同一になり、上場を維持するハードルが極めて高くなった。
2.上場維持コストの増加
コーポレートガバナンス・コードによる上場会社への要請の強化
プライム市場とスタンダード市場の上場会社に求められた「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」もコスト増加に影響
サステナビリティ情報の開示義務化、プライム市場での英文開示の義務化など、上場会社が求められるものが毎年増加
3.資金調達、人材確保、取引先の拡充など、上場によって得られるベネフィットに関する魅力の低下
会社によっては、株式での大規模な資金調達の見込みがないことや、培ってきたブランド力・知名度を活用して、上場を維持しなくても、人材確保や取引先の拡大を行うことが可能
4.会社の将来を見据えた抜本的な改革目的
短期的な利益水準やキャッシュ・フローの悪化等による株価の下落を招く可能性がある抜本的な企業改革を、上場維持したまま実施するのは困難と判断する場合
上場会社の今後の選択
非公開化は今後ますます増加すると推測される。
(理由)
1.上場会社の対応負荷が低下するような制度改正が現時点では考えにくい
2.コーポレートガバナンスの高度化を期待する株主の増加
3.上場維持基準にかかる経過措置の終了
感想
非公開化が今後も増加していくという神尾先生の見解に異論はありません。
この流れが加速するとすれば、会計士業界にとっても市場規模の縮小に見舞われる訳で、看過していい問題ではありません。
以前、弊ブログでこのようなエントリーをアップしましたが、非公開化の流れが加速していくとすれば、法定監査範囲の拡大に向けた動きを強めていく必要があると考えます。
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