ワイヤーカード社と直接確認
- 佐藤篤
- 2020年10月16日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年7月8日
結構前の話題になりますが、ワイヤーカード社の預金残高の実在性に係る不正会計疑惑のニュースがありました。
このニュースを見た時、個人的には、監査法人が入手する預金の直接確認状を、何らかの形でワイヤーカード社側に偽造されたのではないかという疑念を持ちました。
ところが2020年6月27日付の日経電子版の記事を見ますと、どうやら監査法人側は直接確認を行っていなかったとのことです。
(以下、引用)
FTによるとEYは2016~18年、ワイヤーカードがシンガポール大手のオーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)の口座に持つとされた最大10億ユーロ(約1200億円)について、銀行側に直接の確認を取っていなかった。資産の受託者や同社が提供した書類、画面コピーなどで手続きを済ませていたという。事情を直接知る関係者が証言した。(引用終わり)
この記事の真偽のほどは定かではありませんが、もし本当だとすると、監査法人側の過失が認定されてもおかしくない事例だと思います。
そもそも会計監査の現場では、現金預金勘定が不正会計に利用されやすい項目であるにも関わらず、当該勘定の監査は経験の乏しい新人会計士が担うことが多いのです。
それはなぜかと言うと、ひとえに証拠力の強い証拠を入手しやすいからなのですが、その最たるものが銀行からの直接確認状の入手です。
監査人はブランクの直接確認状を直接銀行へ送付し、回答を直接銀行から入手するため、原則的に監査クライアントが証拠入手プロセスに関与しません。
そのため、本来クライアントによる証拠改ざんは非常に困難なのですが、過去には、監査法人担当者が銀行へ郵送する直接確認状を郵便局へ持ち込むのを監査クライアントの担当者が追尾し、監査法人担当者が投函後、その姿が見えなくなったのを確認してから何等かの理由を告げて郵便局から投函済の直接確認状をすべて回収し改ざんを行ったという事例もあったようです。監査クライアント企業の、何としても利害調整上必要な決算数字を作るという強い執念を感じさせる事例です。
現在では、監査人が各自の方法で直接確認状自体に同一物認定できるような仕組みを施すようになり、同じ手は使えなくなっています。
それにしても、上記引用記事が事実だとして、何故ワイヤーカード社の監査チームは直接確認を実施していなかったのか、今後の公判の過程で明らかになるものと思われ、個人的にこれからもフォローしていくつもりです。
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