リース会計の改正論点~監査人の視点からみたIFRS新リース基準適用初年度の実務対応ポイント~「企業会計」2021年11月号
- 佐藤篤
- 2021年12月21日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年6月26日
前4回に引き続き、「企業会計」2021年11月号上で特集されていた「新たなリース会計基準5つの論点」に係るエントリーです。今回は当該特集内の一記事「監査人の視点からみたIFRS新リース基準適用初年度の実務対応ポイント」を取り上げます。
財務諸表への影響
キャッシュフロー計算書では従来賃借料が計上されていたものがなくなり、営業活動によるキャッシュフローが改善する。一方でリース料の支払いによるリース負債の減少は財務活動によるキャッシュフローとなる。
新リース基準適用に伴う財務指標の変化が財務制限条項に抵触する可能性がある。
利息法により費用計上が前加重になることから、直近の損益が悪化して経営者の業績評価指標に悪影響が生じる場合、簡便法の適用範囲を拡大するインセンティブが働く可能性がある。
網羅性について
オフィス、店舗、借上げ社宅、倉庫、物流センターといった不動産のみならす、社用車、コピー機の類までがオンバランスされる可能性がある。適用初年度はリース契約の内容を細部まで確認し、判断する作業工数が膨大になる。
リース契約、賃貸借契約といった名称を伴わない契約、例えば使用契約、サービス供給契約、傭船契約、占有契約なども含まれる可能性がある。
契約関連の情報が企業内の複数の部署で管理されており、会計処理に必要な情報を一元的に集約しづらいケースが散見される。
特に重要なサービス要素を含む契約では、サービスに使用される資産について、契約により特定された資産の使用を指図する権利が移転されるかどうかがリースの要素を含むか否かの判断のポイントとなるが、個々の状況や条件を踏まえた実際の判断は難しい場合がある。
網羅性が特別な検討を必要とするリスクに該当するケースもあり得る。
リース期間の見積りと割引率の算定
特に難易度が高いポイントである。
リース期間の見積り
契約で定められる解約、延長等の権利(オプション)について、権利を行使すること又は行使しないことが合理的に確実かどうかを見積もる必要がある。
業務処理上の煩雑さを和らげるために企業がリース取引をその性質や資産の使用方法、使用の実態に応じてグルーピングし、グループごとに企業の実態に応じたリース期間の見積りを行うための適用ガイダンスを設けているケースも多く見られる。
割引率
原則は貸手のリースの計算利子率を用いるが、実務上は困難なケースが多いため、借手の追加借入利子率(IBR)を用いることも容認されている。IBRの見積もりにあたっては、使用権資産を担保とした同様の経済環境における条件下での借入を考慮することになる。
企業のグループ内での割引率の適用単位にも判断が必要な場合がある。親会社と子会社の地域や経済環境などを十分に考慮し、割引率を算定するための適切なグルーピングが出来ていることを会計監査人に示す必要がある。
短期リース及び少額資産リースの免除規定
短期リースの免除規定の適用の可否は、契約における解約不能期間が12ヶ月以下かどうかに従って単純に判断するのではなく、延長及び解約オプションの行使可能性についても考慮しなければならない。
少額資産の免除規定については、新品時に5,000米ドル程度を下回る資産であることが目処。
5,000米ドル程度を超える金額のオフバランス処理は、一般的な重要性の概念に照らして総額で重要性の有無を判断する必要がある。
感想
想像していた以上に大変そうだ、というのが率直な感想です。
特に適用初年度に向けての作業工数は膨大になることが容易に想像できます。企業によっては移行プロジェクトを組んで対応する必要もありそうです。
加えて適用初年度以降の業務フローの見直しも必須で、それに係る内部統制の評価作業も求められそうです。
今の内から、契約情報が企業内の複数部署で管理されている場合の一元化程度は取り掛かっておいてもよさそうだな、と思いました。
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