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トヨタグループ企業の原価管理~「企業会計」2022年4月号~

  • 佐藤篤
  • 2022年6月14日
  • 読了時間: 4分

今回も「企業会計」2022年4月号の『「原価計算基準」は生きた化石か』特集関連のエントリーです。それだけ面白く読めた特集だったのはもちろん、私自身の原価計算への”食いつきの良さ”のようなものを自覚させられた次第です。

今回は当該特集の一記事「トヨタグループ企業の原価管理と原価教育」(足立直樹・梅田浩二)に触れます。


以下、当該記事の要約です。

  • トヨタグループの原価管理の基本は原価企画・原価維持・原価改善である。

  • 原価企画は製品の目標利益を達成すべく製品開発段階からサプライヤーも巻き込んで行うサプライチェーンとしての原価管理活動のこと。

  • 「原単位」とはこの原価企画活動によって確定した製品の部品点数や工数などの物流標準のこと。

  • 原価維持は原価企画で作りこまれた標準を原単位管理と予算管理によって実現、維持する活動をいう。

  • 原価改善とは、量産開始後に主として製造部門や生産技術部門が中心となり、日々の生産活動の中での創意工夫によって標準原価を低減させていく活動を言う。

  • 製造現場においては、作業能率や直行率、稼働率や可動率といった非財務指標を管理することが中心であり、これらを原単位に沿って管理していくことで原価維持を図っている。製造現場での原価管理の根幹は原単位管理であり、利益や費用といった会計指標のない会計フリーアプローチである。

  • 研究開発費の定義にもよるが、トヨタグループ企業の多くでは受注・量産化が決定している新製品の設計および生産準備費用は期間費用ではなく、製造間接費として処理した上で製造原価と棚卸資産に按分して、製品群と対応させている。ここでの問題点は、現在行なっている製品設計の費用は1〜2年後に量産化が開始される製品の費用であるため、時間軸で収益と費用が対応していないことである。

  • IFRS導入を契機として、①研究開発目的ごとの案件管理、②研究段階、開発段階及び開発終了後の製品化段階を区別したステータス管理、を行うグループ企業も増えた。研究開発費の無形資産化が進行している。


感想

当該特集の別記事に以下のような記載がありました。

原単位には通常、製造上回避できない材料ロスや作業上必要な余裕は反映するものの、いわゆる作業ミスによる仕損や手待ちによる工程ロス等は一切許容しない。この点、「原価計算基準」では「標準消費量は、通常生ずると認められる程度の減損、仕損等の消費余裕を含む」と定義しており、部品表に基づき標準消費量を設定する企業の標準はやや厳し目である。

作業ミス等は全て原価超過と認定される訳ですから、これは現場担当者に対して結構なプレッシャーになっていると想像されます。

「乾いた雑巾を絞る」と言われる原価削減の一端を垣間見た気がしました。


その他、研究開発費の製造費用への計上について、日本基準では研究開発費の製造費用計上は限定されています。

会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(平成26年11月28日)の第4項において、以下のように記載されています。

研究開発費は、新製品の計画・設計、既存製品の著しい改良等のために発生する費用であり、一般的には原価性がないと考えられるため、通常、一般管理費として計上する。ただし、製造現場において研究開発活動が行われ、かつ、当該研究開発に要した費用を一括して製造現場で発生する原価に含めて計上しているような場合があることから、研究開発費を当期製造費用に算入することが認められている。

この場合、当期製造費用に算入するに当たっては、研究開発費としての内容を十分に検討してその範囲を明確にすることとし、製造現場で発生していても製造原価に含めることが不合理であると認められる研究開発費については、当期製造費用に算入してはならないこととなる。

特に、研究開発費を当期製造費用として処理し、当該製造費用の大部分が期末仕掛品等として資産計上されることとなる場合には、従来の繰延資産等として資産計上する処理と結果的に変わらないこととなるため、妥当な会計処理とは認められないことに留意する必要がある。(以下、省略)

トヨタ自動車㈱はIFRSを採用しているので問題ないのでしょうが、日本基準採用企業で研究開発費の製造費用計上を目論んでいる場合は慎重な判断が求められることになりますので注意が必要です。

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