『「倫理規則に関するQ&A」(非保証業務等に関する項目)の解説』を読んでみました(その3)~会計監査ジャーナル2023年2月号~
- 佐藤篤
- 2023年2月7日
- 読了時間: 3分
IFRSの導入支援業務
監査対象である会計帳簿の記帳代行及び財務諸表の作成業務に該当する場合には、社会的影響度の高い監査業務の依頼人に対して提供することはできない(倫理規則R601.6項)。
上記に該当しない場合であっても、当該業務が提供可能であるかどうか判断するために、倫理規則の規定に準拠し、以下の点について十分に検討する。
経営者の責任を負うリスク(倫理規則第600.7 A1項、R400.13項及び第400.13 A2項)
阻害要因の識別と評価(倫理規則R600.8項)
阻害要因、特に自己レビューという阻害要因への対処(倫理規則R600.16項及びR600.17項)
上記により、多くの場合、社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人に対してIFRSの導入支援業務を提供することはできないと考えられる。
ただし、業務を段階的に細分化した上で各業務の性質を十分に検討し、依頼人との役割分担等を踏まえた業務の詳細な内容から阻害要因の識別と評価を行った結果、限定された範囲内において経営者の責任を担う可能性または自己レビューという阻害要因が生じない場合には、その範囲内において、依頼人に対し業務を提供することは可能であると考えられるとされている(Q601-2-1)。
本誌17ページには、具体的なIFRS導入支援業務に係る段階的分析の一例が図表3として提示されている。
非財務情報に関する非保証業務の提供
監査及びレビュー業務を提供していない社会的影響度の高い事業体に対して、非財務情報に関する保証業務とともに非保証業務を提供する場合
保証業務部分について、自己レビューや養護、馴れ合いといった阻害要因が生ずるものと考えられるため、倫理規則第950.12 A1項が参照する倫理規則R120,10項から第120.10 A2項までに定める阻害要因への対処を行うこととなる。
監査業務の依頼人に対して、非財務情報に関する非保証業務を提供する場合
それが財務情報や財務報告に係る内部統制等に影響を及ぼし、会計事務所等にとって自己レビューという阻害要因が生じる可能性がある場合には、そうした非保証業務の提供は禁止されている(倫理規則R600.16項)。
具体例として、気候変動シナリオ分析等に関する非保証業務を提供し、当該業務が貸倒引当金の算定に影響を及ぼすような場合が挙げられている。
社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人が有価証券報告書や業務報告において開示する記述情報に関して、会計事務所等又はネットワーク・ファームが非保証業務を提供する場合、その他の記載内容の検討については、一般的に自己レビューという阻害要因を生じさせる可能性はないものと考えられる(監査基準報告720第8項参照)。但し、上述のように、非保証業務の提供が自己レビューという阻害要因を生じさせる可能性がある場合には、提供はできないことになる。
その他
提供可能な非保証業務の具体例の例示列挙については困難とされ、なされていない。
上場支援業務に係るガイダンスの提供についても困難であるとされている。
上場により社会的影響度の高い事業体となる可能性を考慮して非保証業務の提供可能性の判断を行うことが望ましい。特に依頼人が上場事業体として社会的影響の高い事業体に該当することとなる上場申請期においては、その期首から非保証業務の提供についての可否を判断することが適当であると考えられる。
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