『「倫理規則に関するQ&A」(非保証業務等に関する項目)の解説』を読んでみました(その2)~会計監査ジャーナル2023年2月号~
- 佐藤篤
- 2023年1月31日
- 読了時間: 4分
会計監査ジャーナル2023年2月号の特集『「倫理規則に関するQ&A」(非保証業務等に関する項目)の解説(山田雅弘 安藤武)』を読んでみた、のその2です。
今回は非保証業務に関する監査役等とのコミュニケーションのパートです(その1はこちら)。
監査役等とのコミュニケーションの方法及び実施時期
事業体が様々なコーポレート・ガバナンスの構造を有することを考慮して、非保証業務を提供する前に監査役等の了解を得るという要求事項の遵守を促進するために、倫理規則は、依頼人の監査役等との間で会計事務所等が、いつ、誰に対してコミュニケーションを行うかというプロセスの合意において柔軟性を認めている。
具体例
一般的な方針として、会計事務所等の独立性を損なわないことに監査役等が同意する場合、その都度事前了解を得ずに提供できる業務を識別すること。
社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人と同一のグループ内の他の事業体に提供される非保証業務に関する情報を開示できない場合、会計事務所等が従うべき手続を定める。
監査役等との了解に係るプロセスの構築
具体例
文書による回答とするか、口頭による回答で記録を残すか等について、事後的に認識の齟齬が生じることがないよう取り決めておく。
業務の内容や実施時期に応じて、包括的に了解を得るか、または個別的に了解得るか等について取り決めておく。
業務の量的または質的な重要性に関わらず、全ての非保証業務が対象となることに留意。
依頼人の他、親事業体又は子事業体に対して提供する場合にも「了解」を得ることになる。その場合、企業グループ内にある他の社会的影響度の高い事業体についても、当該プロセスに含まれる可能性があることに留意する。
特定の業務については常勤監査役に一任する、企業グループ内の監査役等に「了解」の権限を割り当てる等、具体的な権限の割当てのプロセスを決めておく。
監査役等に対する情報の提供が職業的専門家としての基準若しくは法令等により禁止若しくは制限されている場合または機微情報若しくは機密情報の開示につながる可能性がある場合に、倫理規則R600.23項に記載の条件について確認し、合意しておく。
予め取り決めた合意プロセスが適用できない場合、どのように対処し、解決すべきかについて取り決めておく。
包括的な了解
依頼人等に対して提供予定の非保証業務を特定し、次の要素に基づき類型化する。
業務内容や独立性に対する阻害要因の程度
業務範囲
報酬の算定方法
監査報酬総額に対する、非保証業務に係る報酬総額の割合
これらの要素の組み合わせ
類型化された非保証業務のそれぞれについて、倫理規則セクション600で禁止されていない業務であること、かつ、会計事務所等の独立性に対する阻害要因が生じない、又はそのような阻害要因が生じる場合でも、許容可能な水準にあることの説明が可能かどうかを検討・判断する。その判断結果を監査役等に伝達し、監査役等の事前了解を得る。
複数の社会的影響度の高い事業体が含まれる企業グループにおける監査役等の了解
複数の社会的影響度の高い事業体が含まれる企業グループにおいて、それぞれの社会的影響度の高い企業体の監査役等が会計事務所等の独立性を効果的に評価することを可能にする目的に照らして有効であると考えられる場合には、例えば、次のような了解のプロセスを構築することが考えられる。
子事業体を支配する事業体の監査役等が、社会的影響度の高い事業体である子事業体に対して提供される非保証業務についても集約して了解し、子事業体の監査役等に対して報告する。
社会的影響度の高い事業体である子事業体の監査役等が、自らの事業体に対して提供される非保証業務について了解し、子事業体を支配する事業体の監査役等に対して報告する。
このようなプロセスを構築できる前提を「それぞれの社会的影響度の高い事業体の監査役等が会計事務所等の独立性を効果的に評価することを可能にする目的に照らして有効であると考えられる場合」としている。
当該記事には公開草案で寄せられたコメントに対する解説もなされていますが、ここでは省略しました。詳しく知りたい方は当該記事をお読み下さい。
今回も結構な字数になりましたので、ここで切りたいと思います。
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