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『「倫理規則に関するQ&A」(非保証業務等に関する項目)の解説』を読んでみました(その1)~会計監査ジャーナル2023年2月号~

  • 佐藤篤
  • 2023年1月24日
  • 読了時間: 6分

会計監査ジャーナル2023年2月号の特集『「倫理規則に関するQ&A」(非保証業務等に関する項目)の解説(山田雅弘 安藤武)』を読んでみました。


以前、弊ブログのこのエントリーでも触れたように、企業側は今回の倫理規則の改正に関して、非保証業務提供の厳格化にかなりの懸念を持っているようでした。

その点を考慮しますと、非保証業務等に関してかなり企業側に配慮したQ&Aになっているのではないかと想像して、当該記事を読んでみました。


尚、結構長いエントリーになりそうでしたので、2回に分けてアップします。


改正倫理規則における非保証業務の取扱

  • 主として社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人に対する非保証業務の同時提供に関する規定を強化している。これにより非保証業務を提供する場合には、監査役等とのコミュニケーション及び事前の了解が必要となる。

  • 非保証業務の提供に関する改正倫理規則の規定は、2023年4月1日以降開始する事業年度の監査業務から適用されるが、会計事務所等又はネットワーク・ファームが、監査業務又は保証業務の依頼人と非保証業務の契約を2024年3月31日までに締結し、かつ、当日までに業務を開始した時には、従前の契約条件に基づき、当非保証業務が終了するまで、なお従前の例により非保証業務を継続することができるとする経過措置が設けられている(2022年改正倫理規則付則第4項)(但し、経過措置を適用するためには、一定の要件を満たすことが求められている点に留意)。

  • 当該Q&Aは48項目で構成されている。そのうち「非保証業務に関する監査役等とのコミュニケーション」に関するものが13項目と大きな割合を占めている。



当該Q&Aの主要項目の解説


(1)他の会計事務所等所属の監査業務の検証者の独立性

  • 従来の「職業倫理に関する解釈指針」では、会計事務所等は外部検証者から独立性の確認書を入手して独立性を評価することに留意することとしていた。それが他の会計事務所等に所属する監査業務の検証の実施者は、当該検証の対象である監査業務の依頼人に対して独立性を保持していることが求められるものと考えられるとし、会計事務所等は、当該検証の実施者の独立性の保持について確認することが考えられることとされた。


(2)監査業務の依頼人に対する非保証業務の提供

  1. 経営者の責任を担うリスクがあるか

  2. 自己レビューという阻害要因が生じるリスクがあるか

  3. 他の阻害要因に対処できるか

  4. 監査役等からの了解を得られるか

これらを全てクリアして初めて非保証業務の提供が可能となる。


(3)非保証業務に関連する法令等

  • 公認会計士又は監査法人等は、公認会計士法上の大会社等に対して監査証明業務と特定の非監査証明業務を同時に提供することが禁止されている(公認会計士法第24条の2及び第34条の11の2)。

  • 公認会計士法施行規則第6条で同時提供が禁止されている非監査証明業務は、改正倫理規則においても禁止される。

  • 監査証明業務又は監査手続と直接的関連性を有するため、監査業務を実施する会計事務所等により提供される事が効率的であり、かつ、監査の品質を向上させることにも有用であると認められる業務又は法令等により監査業務を実施する会計事務所等が実施することを要請されている業務は、上記(2)のポイントを全てクリアする場合は、禁止される被監査証明業務として規制されるものではないと考えられる。

  • 具体的には、

    1. 専門業務実務指針「監査人から引受事務幹事会社への書簡について」等におけるコンフォートレターの作成業務

    2. 専門業務実務指針4465「自己資本比率及びレバレッジ比率の算定対する合意された手続業務に関する実務指針」における業務

    3. 保証業務実務指針3802「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針」における業務

    4. 保証業務実務指針3402「受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針」における受託会社監査人の業務

が該当する。


(4)自己レビューという阻害要因

  • 以下の二つのリスクがいずれも存在する場合は社会的影響が高い事業体である監査業務の依頼人に対して、非保証業務を提供することが禁止される。

    1. 業務の結果が、会計記録、財務報告に係る内部統制又は会計事務所等が意見を表明する財務諸表の一部を形成するか、又はそれらに影響を及ぼすことになるリスク

    2. 会計事務所等が意見を表明する財務諸表の監査の過程において、当該会計事務所等又はネットワーク・ファームが当該業務の提供の際に行った判断又は実施した活動を、監査業務チームが評価し、又はそれらに依拠することになるリスク

  • 自己レビューという阻害要因が生じる可能性のある非保証業務の例示

    1. ある財務報告の枠組みから別な枠組みへ変更することによる影響等、会計帳簿の記帳代行及び財務諸表の作成業務に関連する事項について社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人に助言を提供するケースで、当該助言に、財務諸表における特定の勘定科目についての会計方針の変更による影響の見積りの提供が含まれる場合

    2. 同様の状況下において、財務諸表における特定の勘定科目についての会計方針の変更による影響の見積りの提供が含まれない場合には、そうした助言は、自己レビューという阻害要因が生じる可能性がないと判断されることもある。


(5)助言及び提言の提供

  • 上記(4)二つの要素により判断

  • 経営者が自ら実行計画を策定し、その実行のための会計処理を行う必要があるような、一般的又は概括的な事項に関する助言は、自己レビューという阻害要因を生じさせる可能性は低いと考えられるとしている。

  • 助言の内容がより詳細で、例えば、助言がどのように実行されるべきかについての推奨を含むものであればあるほど自己レビューという阻害要因が生じる可能性は高くなると考えられるとしている。

  • 以下のすべてを満たす場合に限り、社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人に対して、監査の過程で生じる情報又は事項に関連する助言及び提言を提供することを認めている。

    1. 会計事務所等が、経営者の責任を担わないこと

    2. 会計事務所等が、助言の提供によって生じる可能性のある、自己レビュー以外の独立性に対する阻害要因の識別、評価及び対処のため、概念的枠組みを適用すること

  • 上記の条件を満たす限りにおいて提供が許容される助言及び提言の例示

    1. 会計及び財務報告の基準又は方針並びに財務諸表の開示に関する要求事項についての助言

    2. 財務及び会計に係る内部統制の適切性、並びに財務諸表および関連する開示金額の決定に用いられる算定方法に関する助言

    3. 監査上の発見事項に起因する修正仕訳の提案

    4. 財務報告及びプロセスに係る内部統制に関する発見事項についての協議並びに改善に向けた提案等

    5. 勘定調整に関する問題の解決方法の協議

    6. グループの会計方針への準拠に関する助言

  • 監査の過程で生じる情報又は事項に関連する助言及び提言を、形式的に監査業務とは別の業務契約として締結したとしても、通常、許容されるものと考えられることを明らかにした。

  • 一方で、提供が禁止されている非保証業務を監査契約に含めて実施することは、厳に慎まなければならないことも併せて強調している。


今回はここまでとし、残りは次回以降のエントリーとしてアップ致します。

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