「監査におけるAIの利用」~「会計・監査ジャーナル」2024年6月号~
- 佐藤篤
- 2024年6月7日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2024年6月号の「監査におけるAIの利用」を読んでみました。
何となくわかっていた内容もありつつ、なるほどと感じた部分も結構ありました。
以下、メモ書きの一部です。
財務諸表監査における利用
事実の発見において、監査リスクを低く抑えるという観点から言えば、絞り込みに役立つものと考えられる(例.不正検知のソフトウェア)。
証拠による証明においてもやはり絞り込みに役立つものと考えられるが、こちらは重要な虚偽表示リスクに対応する監査手続において利用することになる。
全体での適正性の検討に役立つかどうかという観点では、AIよりも公認会計士の専門能力の方が勝るのではないか。
監査法人における利用例
不正リスクのスコアリングを行い、虚偽表示リスクの高い領域を検出していって、そこを重点的に監査する。
プロセスマイニングのツールを使って、ビジネス上脆弱な領域を洗い出すような手法で可視化し、リスクの高い領域を検出して監査に役立てる。
AI利用の可否判断~「出来る、出来ない」と「すべき、すべきでない」
AIに出来て且つ利用すべき領域は単純作業が該当する。
AIに出来るが利用すべきではないのは、なぜAIがそのような判断をしたのかという説明ができない領域(ブラックボックス問題)。ただし、全体としての説明可能性が高まるような場合、補助的な役割には使えるかもしれない。
監査におけるAIの活用と課題
1.問題がないと思われる使い方の例
財務データを元にスコアリングを行い、ある子会社や支店で基準からの逸脱や急激な変動がないかどうかというのを可視化する。
景気やマーケットの状況から多変量解析のようなしっかりしたモデルで分析する。
2.問題があると思われる使い方の例
ディープラーニングのような判断の理由の説明が難しいモデルを使った分析。
監査に利用されるデータを被監査会社が持っている以上、機械学習やディープラーニングについての利用は進展しない。特に、レガシー・システムで複雑になっている企業の監査は相当手間がかかる一方で、ERPを利用していて標準機能に近ければ近いほど監査は楽になっていくであろう。
AIが、こういうところが危ない、このパターンが怪しいというように知らせてくれるのはいいが、かえってそれが監査人の邪魔になってしまう場合もある。どういう場面でAIが役に立ち、どういう場面でAIが邪魔になるかというのは今後の重要なテーマだと思われる。
感想
AI利用について「すべき、すべきでない」の判断は欠かせない気がします。今でも「ブラックボックス問題」は様々な場面で遭遇しますが。
また、AIの利用がかえって足かせになり得るというのも、特に利用の初期段階においては、可能性の問題として頭に入れておくべきだと思います。飛行機のパイロットが緊急時にシステムの指示に従うか、自らの直感を信じるかの問題と似ています。
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