㈱SCREENホールディングスの特別調査委員会調査報告書を読んでみました
- 佐藤篤
- 1月21日
- 読了時間: 3分
2025年1月14日に株式会社SCREENホールディングス(以下「HD社」)が「特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ」をリリースしておりました(リンク)。
このHD社の事案については、半期報告書の提出期限延長申請が行われた際に弊ブログでも取り上げた経緯があり、個人的に気になっていましたので、ザっと読んでみることにしました。
今回不正の舞台となったのは、HD社の子会社である株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ(以下「SRE社」)です。
事案の概要は以下の通りです。
収益については、原則は装置の据付完了時に認識することになっていた。
例外的に、顧客の投資計画変更等により装置が据え付けされずに倉庫で保管される案件について、据付不要である旨のサイドレターを証憑として、顧客に装置を引き渡した時点で売上計上を行うことがあった。
監査法人による2025年3月期の期中監査手続の過程で、サイドレターにより売上計上が行われた案件について、事後に無償で据付が実施されている事実が判明した。
HD社が社内調査を進めたところ、意図的に収益認識に係る履行義務の充足時点(売上の計上時期)を操作した可能性を示唆する形跡が認められたため、特別調査委員会の調査を実施することとなった。
動機については、以下のような内容でした。
SPE社では、標準のリードタイムを一定期間超過した在庫について、その超過期間に応じて「イエロー」や「レッド」に分類した上で、レッドに分類された在庫について、SPE社の駐在員に対し、滞留理由を報告させている。このような環境の下、SPE社の駐在員は、在庫が長期化している又は長期化することが見込まれる案件に関して、速やかに売上計上をしなければならないという認識を有していた。
SPE社では、四半期ごとに売上目標を設定しているところ、市場の状況や顧客の都合等の影響により、目標を達成できない場合があったほか、反対に目標を大きく超える売上を計上する場合もあった。そのような場合に、顧客における据付時期を再確認し、四半期間での調整が可能な案件の有無を調査することがあった。SPE社では、四半期ごとに売上計画と実績値を比較しており、これらが大きく乖離しないように、売上計上時期の調整の一つの手法として、SL処理が用いられていたと考えられる。
SPE社におけるX事業は2023年3月期まで赤字が続いていた。そのため、SPE社の駐在員には、2024年3月期中にX事業の黒字化を達成するため、期を前倒しして売上を計上するというインセンティブがあったと考えられる。
こうして眺めてみると、手口も動機も特殊な点は見当たりません。
逆の言い方をすれば、世の中のあらゆる会社で同様の事が起こっていても不思議ではなく、却って怖さを感じさせます。
再発防止に関しては、根本的には上記の動機が生じないようにすることが必要で、それには財務会計と管理会計の分離が求められる気がしました。
上場会社では、なかなか簡単な話ではないのですが。
尚、2024年3月期の連結損益計算書への影響額は5,967百万円の売上高の過大計上とのことで、利益への影響については記載されていませんでした。
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