ROEとエクイティ・スプレッドの問題点~「企業会計」2023年8月号~
- 佐藤篤
- 2023年9月15日
- 読了時間: 2分
前々回、前回に引き続き、今回も「企業会計」2023年8月号の特集『中長期的な視点で考える「PBR1倍割れ問題」』関連エントリーです。
取り上げるのは「東証の要請を契機に高まる上場企業の株価への意識」(藤田勉)です。
ROEをKPIとすること問題点
米国では、経営者の評価基準として、総株主投資収益率(TSR、株価上昇率と配当)が使われることが多い。その結果として、配当よりも、株価上昇効果が大きい自社株買いが用いられることが多くなる。
日本では、ROEをKPI(重要業績評価指標)とする企業が多い。
欧米では、ROEをKPIとする大手準用会社はあまりない。ある研究結果によれば、世界の大企業で多く使われるKPIは1位 純利益、2位 EBITと営業利益、3位 EBITDA、4位 総利益、5位 流動比率である。
ROEをKPIとした場合、機関投資家が企業に対して圧力をかけ自社株買いを実施させる。
同様に、証券会社にとって高収益業務であるリキャップCB(時価より高い転換価格を設定した新株予約券付社債を発行し、同時に自社株買いを実施する)の発行が行われ、結果として安値での株式発行が行われてしまう弊害がある。
ROEは企業価値とは直接関係なく、財務戦略(レバレッジ)によって、操作が可能であり、KPIとして不適切である。例えば、アップルのROEは175.5%と高いが、株主資本比率は14.5%であり、財務レバレッジが高い。
ROEの向上を目的に過度な自社株買いが実施されれば、設備投資や研究開発投資が小さくなり、結果として企業が縮小均衡してしまう。
エクイティ・スプレッド(ROEから株主資本コストCOEを差し引いたもの)
日本でしか使われていない、そもそも和製英語であり、欧米で広く使われるものではない。
株主資本コストの定義を株主の期待リターンであるとすれば、エクイティ・スプレッドに対応するのはTSRである。
感想
ご主張は御尤もです。
ROEはそもそも投資家側にとって都合のいい経営指標だなと常々思っていました。
一方で、どんな経営指標にも一長一短あって、KPIの設定って難しいなあ、とも思います。
あと、本筋からは外れるのですが、欧米企業のKPIの上位に流動比率があることに驚きました。どういう業種に多いのか、どういう論拠なのか等いろいろ気になります。
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