ESG投資とインパクト投資~「企業会計」2024年5月号~
- 佐藤篤
- 2024年6月18日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2024年5月号の特集は「インパクト投資の最前線」でした。
その中の「ESG投資との比較で見たインパクト投資」(林寿和)を読んでみました。
当該記事の目的は以下の様に記載されています。
本稿は、昨今注目が高まっているインパクト投資について、(中略)ESG投資との共通点や差異を考察することを通じて、インパクト投資の概念整理を行うものである。
弊ブログでも何度かインパクト投資について取り上げてきたこともあって、興味深く読みました。
以下、メモ書きです。
ESG投資とインパクト投資の違い
「普通の投資」と区別されるポイントを一言で表すと、ESG投資は「行為」の有無で区別される傾向にあるのに対し、インパクト投資は「期待される効果」で区別される傾向がある。
ESG投資であるか否かは、環境・社会・ガバナンスに関する要素(ESG要素)を運用プロセスにおいて考慮するか否か、という行為の有無により区別されてきた。
ESG投資の分類
1.ESGの観点で特定の企業への投資を避ける「ネガティブスクリーニング」
2.ESGの観点で評価が高い企業を厳選して投資する「ポジティブスクリーニング」
3.ESG要素の考慮を企業分析やポートフォリオ構築といった運用プロセスに組みに出る「ESGインテグレーション」
今日、機関投資家がESG要素を考慮する最大の動機の一つが、投資リターンの向上であり、地球環境や人々へのプラスの効果をどの程度強く志向するか、その強弱は機関投資家によって様々である。
インパクト投資は、投資リターンに加えて、地球環境や人々へのプラスの効果という付加価値が期待され、どのような行為が行われていようとも、効果という付加価値が期待されない限り、インパクトウオッシュとのそしりを受けかねない。
インパクト投資家の役割
投資先企業によるインパクト創出に向けて、投資家として実質的な貢献が期待されるか否かが「普通の投資」との重要な分かれ道となる。ベンチャー投資の世界ではハンズオン支援、上場株式投資の世界ではエンゲージメントと呼ばれる活動がこれに当たる。
少数株主の場合、投資先企業への影響力は限定的であることから、実質的な変化を引き起こすことは簡単ではないが、オランダ・エラスムス大学のエミリオ・マルティ准教授らが2023年に公表した論文では、投資家によるインパクト創出への貢献方法として、投資先企業に直接働きかけていく方法の他に、以下の5つの方法があることを明らかにしている。
1.環境・社会課題に対する他の投資家の見方に影響を及ぼす
2.他の投資家と環境・社会課題に関する専門的知見を共有する
3.環境・社会への負荷を伴う特定のビジネス活動を問題する旨の発信を行い、その正当性を低下させる
4.サステナビリティに関するボランタリーな基準を策定する
5.政府による規制改革を支援する
感想
声高にESGと叫ばれると少し胡散臭さを感じてきましたが、一般の個人投資家も、そうとは意識せずにESG投資を実行している気がしました。
例えば、不祥事を起こした会社の株式を売却したり、ガバナンスやビジネス自体に問題がありそうな会社の株式の取得を見送ったりといったような投資行動です。
その点、インパクト投資については、個人で出来ることはほとんど無さそうですが、上記のエミリオ・マルティ准教授らが提示した5項目にはなるほどと思わされましたし、実際に実行している個人投資家も存在しそうです。
そういった意味では、ESG投資もインパクト投資も何も新しい概念ではないように感じました。
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