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B/Sに厳しさを感じた決算~ANAHDの2021年3月期決算の感想

  • 佐藤篤
  • 2021年5月4日
  • 読了時間: 3分

ANAホールディングス株式会社(以下ANA HD社)の2021年3月期決算が発表されました。ニュースによりますと過去最大の赤字額4,046億円だということで早速決算短信を見てみました。

以下はいずれも連結財務諸表の数値をもとに記載しています。


1.まずはありきたりの感想から

コストに占める固定費の割合が高いビジネスは売上高が減ると本当にキツイんだなぁということがよくわかります。売上高は2020年3月期の1兆9,742億円から2021年3月期は7,286億円まで63%も減少しています。

航空ビジネスの場合、大きいコストは燃料費、航空機の減価償却費、システム関連の償却費、人件費あたりになると思うのですが、燃料費は売上の減少とともに減らすことができたとして、人件費と減価償却費はそう簡単に減らせるものではなく、実際減価償却費は前年度1,757億円から当年度1,763億円とむしろ増加している位です。

また、総資産をみますと2020年3月末2兆5,601億円から2021年3月期末3兆2,078円へ大きく増加しています。

調達サイトは長期借入金と払込資本の増加によるものです。運用サイドでは一部が赤字ファイナンスされて残りは現金及び預金と流動性有価証券の増加に回されています。この流動性有価証券はキャッシュフロー計算書注記をみると譲渡性預金のようで、少しでも利息を稼いでおきたいという気持ちはよく理解できるところです。


2.次に特徴的だなと思った点

税金等調整前では5,453億円の損失なのが、当期純損失は4,076億円まで減少しています。法人税等調整額が1,416億円利益サイトに計上されているからなのですが、結果的に貸借対照表に計上されている繰延税金資産残高が2020年3月期末 998億円から2021年3月期末では2,196億円まで倍以上増加しています。

これに対して利益剰余金の2021年3月期末残高は1,451億円ですから、繰延税金資産の残高が利益剰余金の残高を上回ってしまっており、もしこの繰延税金資産の計上がなければ利益剰余金はマイナスだったということになります。

繰延税金資産が大幅に増加した中身は税務上の繰越欠損金へ税効果の認識だと思いますが、監査法人の立場からすると、コロナ・パンデミックの先行きが不透明な中で、かなり厳しい判断だったろうと想像します。

ANA HD社がどういった仮定を設定してこの繰延税金資産を計上したのかは、ちょうど2021年3月期から「会計上の見積りの開示に関する会計基準」が適用されることになり、その関連注記で確認できそうです。決算短信にはその注記の記載はないので、有価証券報告書を待ちたいと思います。


3.まとめ

個人的には、過去最大の赤字額もさることながら、貸借対照表にANA HD社が置かれた状況の厳しさを感じた決算内容でした。

最近は特に物販にも力を入れているようなので、ラウンジ提供オリジナルチキンカレー3kgでも買って少し応援しようかと考えております。



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