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AI等が監査業務へ及ぼす影響~会計・監査ジャーナル2022年7月号~

  • 佐藤篤
  • 2022年6月21日
  • 読了時間: 3分

「会計・監査ジャーナル」2022年7月号に『座談会 理化学研究所による研究報告書「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」の解説』と題された特集記事が掲載されておりました。

この記事は、2022年1月26日付で国立研究開発法人理化学研究所により「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」という研究報告書が公表されており、それに関連して行われた座談会のまとめ記事となっています。

以下、当該記事の概要です。


当該研究の目的と方法

  • 会計士の業務にはいろいろあるが、今回の研究は監査業務に限定した。

  • 「AIは何でもできる、AIによって仕事が奪われる」というような論調によって世間の過度な期待と不安を産んでいるのではないかという危惧があった。この期待ギャップの解消を目的とした研究報告である。

  • 調査対象は監査業務に従事する公認会計士で、監査責任者、主査、補助者ごとに調査を実施。

  • 監査業務を細分化してそれぞれのAI等への代替可能性評価を行い、代替可能性が高い領域を明らかにする一方で、監査法人における人事評価の傾向を分析し、代替可能性が高い領域では人事評価上の重要性が低いことを示した上で、重要性が低い領域に費やしていたリソースをAI等に代替する代わりに重要性が高い領域にシフトさせた時に、監査業務全体の生産性が向上することを示すことが目的

  • 主査と補助者が実施する業務をそれぞれ10項目に分類した上で評価を実施


研究結果

  • 主査が実施する業務については、AI等への代替可能性が低いほど人事評価上の重要性は高くなるという綺麗な逆相関関係が見られる一方、補助者についてはそれほどでもない。

  • 補助者業務において、10年後時点でAI等による代替可能性が高い(60%以上)と評価された項目は証憑突合・帳簿突合・分析的手続、仕訳テスト、表示チェック。

  • 監査業務の一部をAI等に代替させた場合を仮定してどの程度生産性が向上するかシミュレーションを実施した。その結果主査業務は10年後に32.0%、30年後に42.5%、補助者業務は10年後に48.4%、30年後に58.0%生産性が向上する可能性があると評価された。


今後の課題

  • テクノロジー等の加速度的な進展や経済社会の大きな変化等によって既存の監査業務の枠組み自体が変革する可能性も想定され、現状の監査業務を前提としてAI等の活用による生産性向上のシミュレーションを行ってよいのか。

  • AI等の活用によって、従来補助者が実施していた証憑突合のような業務を人間が行う必要がなくなった際に、どのような作業を通じて年次の浅い公認会計士に専門家としてのスキルを習得させていくか。


感想

クライアントとのコミュニケーションに係る業務はAI等への代替可能性が低く、監査法人での人事評価上も重視されている点は直感に反しない結果だと思います。


一方でAI等の本当の驚異は、今後の課題に記載されているように、現状の監査業務の枠組み自体が大きく変化することだと思います。現時点では全く想像もできない方法で財務諸表への保証が行われるようになり、その結果公認会計士が極少数で足りるようになる、若しくはそもそも不要となる可能性です。

AI等への投資として考えた場合、人件費の安い部分へ投資するよりも高い部分を置き換える方が投資効率は良いことは言うまでもありません。監査業務の場合、補助者よりも監査責任者を不要とする方向に投資した方が効率的です。そのために監査の枠組み自体を全く別の物にしてしまうという発想は可能です。パラダイム転換ですね。

だからといって、それが実現するかどうかもわからない現段階で心配しても仕方ないのですが。


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